今回は大臀筋、中臀筋、大腿筋膜張筋の3筋を触察実習しました。
【大臀筋浅部】
(起始)腸骨稜、上後腸骨棘、腰背腱膜、仙骨、尾骨
(停止)腸脛靭帯
【大臀筋深部】
(起始)腸骨外側面、仙結節靭帯
(停止)大腿骨臀筋粗面

大臀筋には伸展、外旋、外転、内転の働きがあります。
この筋は構造(形状)的には浅部と深部とに分かれますが、機能(作用)的には上部と下部とに分かれます。
上部には伸展、外旋の他に外転の働きが、下部には内転の働きがあります。
大臀筋には上記の働きの他に、安定筋としての働きがあります。
すなわち体幹部、骨盤部、下肢部において、矢状面での動きを安定させます。
歩行の際には上体の安定を保つ働きがあり、特に踵接地の際に慣性力によって股関節や体幹が屈曲するのを防ぎます。
浅部は、腰背腱膜を介して脊柱起立筋群や広背筋などに影響を与えます。
腰背腱膜(腱膜群と言ったほうが本当は正しいでしょう)を下方から牽引して「張り」を作ることで、この腱膜と関わる(に付着する)筋群の働きを助けます。
腸脛靭帯を介して(大腿筋膜張筋と協力して)膝関節にも影響を与えます。
この筋の触察実習では、股関節伸展の働きで大臀筋全体の活動を、外転で上部、内転で下部の活動を触察しました。
伸展の働きを使っての触察では、大臀筋だけでなくハムストリングスも強く働きます。
腹臥位で脚を伸ばした状態からの伸展ですから、ハムストリングスの起始部である坐骨結節は大臀筋の下縁部に覆われている状態(ちなみに座位では、坐骨結節は大臀筋に覆われていません)で、両筋の境界を鑑別することが難しくなります。
そこで膝関節を屈曲位にし、つまりハムストリングスを少し弛ませた状態を作った上で股関節伸展を誘導します。
上部と下部との鑑別は、股関節の外転・内転を繰り返し誘導することで、両者の境界を発見する方法を取りました。
境界が明確でない場合には、明確にするテクニック(ファシャワークの方法)を簡単に行ってから、再度挑戦していただきました。
【中臀筋】
(起始)腸骨外側面
(停止)大転子外側面

中臀筋は前部(前方線維)と後部(後方線維)とに分かれます。
前部には外転、屈曲、内旋の働きが、後部には外転、伸展、外旋の働きがあります。
ペアで触察を行う前に、歩行をしながら自分の筋を触察していただきました。
この筋は歩行時、股関節がどの方向に動いても、休まずに働きます。
動く方向によって働く線維が違うので、様々に形状を変えていきます。
細かく注意を向けて触察すると、足を前に出す時、前部が屈曲で、後部が外転で働きます。
後部が外転で働くのは、足を前に出す時に、骨盤の同側も前に出るので、大腿部は骨盤に対しては屈曲だけでなく外転するからです。
足を後ろに残す時、前部が内旋で、後部が伸展で働きます。
ペアでの触察では、股関節外転でこの筋全体の活動を、内旋で前部の、外旋で後部の活動を触察しました。
前部と後部との境界は、内旋と外旋を繰り返し誘導することで鑑別しました。
両者を鑑別すると、後部より前部のほうが大きいのが分かります。
【大腿筋膜張筋】
(起始)上前腸骨棘
(停止)腸脛靭帯を介して脛骨粗面外側(ガーディ結節)

大腿筋膜張筋には、股関節屈曲、外転、内旋の働きがあります。
この筋は中臀筋の前縁に接しますが、中臀筋のように腸骨外側面上を走行しているのではなく、上前腸骨棘に起始した後は、腸骨の前外方を走行します(ちなみに、同じ上前腸骨棘に起始する縫工筋は、そこから前内方を走行します)。
大腿筋膜張筋は、その後すぐに腸脛靭帯に付着しますが、この腸脛靭帯は大腿筋膜と独立していません。
腸脛靭帯は大腿筋膜の肥厚部であると考えたほうがよいでしょう。
そう考えると、大腿筋膜張筋は股関節を、および腸脛靭帯を通して膝関節を動かしますが、それだけではなく大腿筋膜に「張り」を作り(名のとおりです)、それと連続する下腿筋膜にも影響を与えます。
大腿筋膜張筋の触察では、骨指標として上前腸骨棘、脛骨のガーディ結節を調べた後、この筋と腸骨との位置関係を知るために、腸骨の前先端部(上前腸骨棘、下前腸骨棘がある部位)を確認し、その部位に対してこの筋がどう走行しているかを探りました。
また中臀筋との鑑別も行いました。
今回は3筋の触察実習を行うに当たって、(1)効率的に触察するためのホールディング、(2)タッチの方法、(3)目標とする筋に拘縮や癒着があった場合にそれらを一時的に解消した上で触察する技術、などをお伝えしました。