ある日、師である百丈が亡くなった。
香厳は兄弟子に、「私は未だ出来上がっておりません。あなたの弟子にしてください」
兄弟子はそれに応えて、「弟子になりたければ、お前の父母や祖父母が生まれる前の顔でやって来い」
「父母や祖父母が生まれる前の顔」とは?
香厳は生まれつき聡明、しかも努力家。
それまで数多くの読書をこなし、経を読破してきた。
しかし未だ「来上がって」いなかった。
それは書物では学べない
お前の父母や祖父母が生まれる前の顔?
いくら考えても分からない。
それは考えても分からない
絶望し、悟りを開くのをあきらめて、兄弟子に答えを乞うが、断られる。
それは誰からも聞けない
心底の絶望。
寺を去った香厳は、毎日、毎日、庭掃除をして暮らした。
・・・
あるとき、石が竹に当たって音を立てた。
その音を聞いたのは〈誰〉か?
香厳はかつて後にした寺の方角に、兄弟子に向かって、深々と頭を下げた。
それは書物では学べない
それは考えても分からない
それは誰からも聞けない
2014年08月08日
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