2014年08月09日

第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第13回

8月7日、第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第13回が開催されました。
今回は長内転筋、恥骨筋、薄筋、短内転筋、大内転筋の5筋を触察実習しました。

9-13-1.jpg


【長内転筋】
(起始)恥骨結節下方
(停止)大腿骨粗線内側唇の中1/3
(作用)股関節内転、屈曲、伸展、内旋、外旋

解剖学書などで内転筋群の図を見ると、ほとんどが大腿内側面のものです。
内転筋群が大腿内側にあるので、そうならざるを得ないでしょうが、この面から見ると長内転筋は内側縁が見えるだけなので、薄筋よりも細い筋肉だと思われがちです。
それに対して薄筋は、幅のある面を見せることになるので、太い筋肉に見えるのです。
ところが実際には、長内転筋のほうが幅広く大きな筋肉です(長さは薄筋のほうがありますが)。

今期は内転筋群の触察実習を、大半は被触察者が背臥位で行いました(大内転筋だけは腹臥位でも行いました)。
被触察者は背臥位で膝を曲げ(股関節・膝関節屈曲位)、股関節外転・外旋位で、触察者はその膝をホールドします。
大腿内側面近位でもっとも突出した部位(その部位に長内転筋があります)に触察手を置き、被触察者に膝を立てる(内転する)よう指示します。
突出した部位が硬くなり、長内転筋を確認できます。
今回は長内転筋を、内側広筋の下層に向かう部位まで触察しました。

長内転筋は股関節を内転させる他に屈曲および伸展させることもできます(その他に外旋・内旋も)。
ところがこの筋を45〜90度で屈曲位にすると、その中で屈曲でも伸展でも反応しない角度があります(個人差があります)。
その角度を探して、そこでは内転でしか反応しないことを確認しました。
これは面白かったのではないかと思います。

【恥骨筋】
(起始)恥骨櫛
(停止)大腿骨上部
(作用)股関節内転、屈曲、内旋、外旋

前述の「もっとも突出した部位」は長内転筋の内側縁でしたが、その部位を頂上にして「なだらかな山」になっています。
山頂の前側斜面には恥骨筋が、後側斜面には薄筋が走行しています。
薄筋と長内転筋との境界は鑑別しやすいのですが、恥骨筋と長内転筋との境界は難しい場合があります(個人差があります)。
その場合には大腿動脈をまず捉え、その内側で恥骨筋に触れて、恥骨筋の側から軽く押圧しつつ長内転筋に接近すると、それらの境界が分かりやすいと思います。

【薄筋】
(起始)恥骨結合外側
(停止)脛骨粗面内側
(作用)股関節内転、屈曲、膝関節屈曲、内旋

薄筋は長内転筋の後側を走行した後、脛骨粗面内側(鵞足)まで達します。
内転筋群の中ではこの薄筋だけが2つの関節をまたぎます(二関節筋。他は単関節筋)。
薄筋は大腿の内側表面を走行するので、容易に触察できます。

この筋に対しては、2つの方法で触察実習しました。
1つは股関節を内転させながらの触察、もう1つは股関節を外転位に(つまりストレッチ)させながらの触察です。

【短内転筋】
(起始)恥骨下枝外側
(停止)大腿骨小転子から粗線まで、粗線内側唇の上1/3
(作用)股関節内転、屈曲、内旋、外旋

短内転筋は内側縁と前面を触察しました。
内側縁の触察は、長内転筋と薄筋の間に手指を進入させて行いました。
この進入口(ポケット)を使う場合には、長内転筋に沿うように手指を進入させなければなりません。
短内転筋は長内転筋と重なるように走行するので、角度を間違えると、短内転筋にかすりもしません。

前面の触察は、長内転筋の前側、恥骨筋のすぐ遠位で行いました。
長内転筋と薄筋の間で触察するようには、深く手指を進入させる必要はなく、浅い位置で触れることができます。

【大内転筋筋性部】
(起始)恥骨下枝
(停止)大腿骨粗線内側唇
(作用)股関節内転、屈曲、内旋
【大内転筋腱性部】
(起始)坐骨枝、坐骨結節
(停止)内側上顆上方
(作用)股関節内転、伸展、外旋

大内転筋の触察は、長内転筋と薄筋の間から手指を進入させて行う方法、腱性部を内側上顆上方の内転筋結節から坐骨結節までたどる方法、ハムストリングスの外側で捉える方法、ハムストリングスの内側で捉える方法、の4つの方法で行いました。

長内転筋と薄筋の間から手指を進入させる方法では、前述の短内転筋を触察するための同じ進入口を使いますが、経路が違います。
短内転筋の場合と違って、長内転筋に沿わず、後方へ離れていくような角度で手指を進入させます。

腱性部の触察は、股関節を外転・屈曲させて行います。
腱性部の働きは股関節の内転・伸展ですので、その反対方向へ動かすことでストレッチし、硬く張った状態を作っての触察です。

ハムストリングスの外・内側で捉える場合には、被触察者は腹臥位です。
ハムストリングスの外側での触察は、大臀筋の下内側で行います。
大臀筋の下層に手指を進入させて行えば、停止部に接近することができます。
ハムストリングスの内側での触察は、そこに手指を置けば、浅い位置で触れることができます。


今回の触察実習は難しかったかもしれません。
今回の対象である内転筋群は特に、手指を進入させる角度や押圧の仕方を間違えると、隣り合う筋同士を鑑別することができないからです。

最後に、個々の内転筋を正確に触察できると、何ができるかをデモでお見せしました。
2名の受講生さんにデモ・モデルになっていただき、今回触察実習した手順で個々の内転筋のエッジをなぞりました。
特に緊張がある筋に対しては、軽くストレッチしつつ行いました。
1分にも満たない時間ですが、その結果、脊柱の可動域が明らかに広がりました。
これは誰が行っても同様の結果になります。

これまで触察実習した筋の中では、腰方形筋や斜角筋なども、単に触察するだけで(ただし正確にエッジをたどれなければなりませんが)同様の結果が得られることをお伝えしました。
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