今回のテーマは「疼痛解消テクニック(その2)」でした。
前回は、ファシャ・リリース・テクニックを応用した疼痛解消法をお伝えしました。
ファシャワーカー養成トレーニングで実習したテクニックの応用ですので、難しくはなかったと思います。
また、ファシャワークを応用することで、容易に疼痛を解消できることに驚かれたかと思います。
今回は、新たな角度から疼痛に対処する方法をお伝えしました。
ファシャワークの要素も含みますが、全体的には全く異なる方法です。
手技の用い方などもファシャワークとの共通点はなく、戸惑われたかと思います。
また、知的に理解するだけでは使えず、ある程度の熟練が必要な方法ですので、実習開始の時点では難しく感じられたでしょう。
実際、実習の際にそういう感想が聞こえてきました。
今回、講師側は、伝授法についてかなり悩みました。
前述したように、ある程度の熟練が必要な方法ですし、技術面でこれまでの方法と連続性がありませんので。
実は、テキストを何度も書き直し、最終的に完成したのは前日(1月10日)でした。
結局、「概説→実習→解説→実習」というプロセスでお伝えすることにし、テキストもそれに合わせた内容となりました。
今回はその前半、「概説→実習」の部分を行いました。
概説では、急性痛と慢性痛について簡単に説明しました。
急性痛が起こる際に、神経系ではボトムアップの情報処理が行われています。
つまり、受容器からの感覚フィードバックを最終的に前頭葉が認知・判断する、という伝達の流れです。
それに対して慢性痛の場合、トップダウンの情報処理が同時に、あるいは単独で行われています(極端な言い方をすれば、身体がなくても痛みは感じるのです)。
前頭葉が頭頂葉から情報を引き出すという形です。
後者の、トップダウンの情報処理によって疼痛が起こるというのが、受講生の方々には分かりにくかったようですが、斎藤講師が幻肢痛の例を挙げて説明することで、理解していただけたようです。
急性痛に対しては、ボディワーカーは「直接的には」何も行えません。
病院で受診することを勧めなければなりません。
慢性痛に対しても、ボディワーカーが対処できるのは、病院での受診後です。
実際、ボディワーカーのもとを訪れるのは、どの病院に通院しても、あるいは多数の病院で治療を受けても治らないといった方々です。
急性痛でボディワークを受けようと思う方は滅多にいないでしょう。
急性痛、慢性痛について説明した後は、疼痛(慢性痛)解消テクニックについて、やはり簡単に説明しました。
慢性痛を解消しようとする場合、疼痛が組織痛(例えば、筋原性)であっても、組織生理(筋生理)を操作対象とするだけでは、その疼痛を解消できない(できたとしても一時的でしかない)ことが多いでしょう。
疼痛の体験を(記憶から)作り出している脳神経系に対して働きかけなければなりません。
今回のテクニックには、疼痛解消のための3つの働きかけが含まれています。
1.筋紡錘に働きかける。
2.体液循環を促進する。
3.記憶を改変する。
(これらの働きかけに対応する、それぞれ別個の手技があります)
また、特別なホールディングと、身体から情報収集を行う方法があります。
実習では最初に、受講生に方々に受け手になっていただいて、デモンストレーションを行いました(その場面を幾つか動画に撮りましたので、後ほどこちらにアップしようと思います)。
このテクニックでは、疼痛部位に働きかけながら、膜連続体を通して全身の構造を変えると同時に、感覚留意を誘導することで脳機能の再編成(記憶の改変)を行います。
その際、施術者の姿勢とホールディングが重要で、それらが上手くいかないと、疼痛は解消できません(姿勢の取り方とホールディングによって、様々な働きかけを行います)。
解消できたとしても(デモンストレーションでお見せしたのですが、単に疼痛を解消するだけであれば、5、6秒で十分です)、構造を変えることができず、疼痛が再発するか、他の部位に痛みが出ることもあります。
例えば、ホールディングを行う手腕では、同時に膜連続体の動きを追います。
疼痛部位に向かって膜連続体が収縮しているので、また多数の疼痛部位があれば、それらの間に複雑に張力が働いています。
疼痛部位の状態が改善されていくと、その張力関係が変化していきます。
それを追い、自然調整を待ち、また調整を加えます。
手技もファシャワークのものとはだいぶ異なります。
例えばファシャワークの浅筋膜操作では、関節可動域を広げるためには、ファシャを丁寧に伸長しなければならず、それなりの圧をかける必要があります。
それに比べて疼痛解消テクニックで用いる手技は、かなりソフトなものです。
デモンストレーションで、その手技を用いて関節に働きかけたのですが、関節の近くをさっとかすめるように触れるだけで、たちまちその関節の動きがスムーズになり、可動域も広がります。
受講生の方々は驚いたようで、「本当ですか!?」「うそ!」という声も上がりました。
しかし、受講生の方々どうしで行っていただくと、同様のことが起こりました。
デモンストレーションの後は、全身に渡るホールディングの例をお見せして、実習に入りました。
以下が実習場面です。




実習は、疼痛が解消できたり、緩和できたり、また身体構造が改善したりと、良いスタートでした。
この疼痛解消テクニック(その2)については、今回の1回だけで習得することは難しいと思いますので、何回かに渡ってお伝えしていく予定です。