今回のテーマは「内臓操作(その1)」でした。
オープンパスが末梢神経操作、内臓操作、脈管操作を独自に開発するに至ったのは、ごく自然なことでした。
身体の構造を探求し、運動機能の向上、回復を追求していけば、筋骨格系を対象とする方法だけでは足りません。
身体の構造、機能を突き詰めるほど、「解決できない問題」は増えていきます。
神経系、消化器系、循環器系などには、それらが持つ主機能に加えて、身体を支持し、運動を援助/補助する機能があります。
オープンパス・メソッド(R)・ワーカーは、そうした機能を理解し、不具合があれば働きかけます。
考えてみれば、ファシャ fascia は筋骨格系だけでなく、他の系に含まれる全ての器官を個々に、あるいはグループごとに覆っているので、ファシャを対象にすれば、全ての系に含まれる器官が対象となるのは必然かもしれません。
ファシャは全身を隈なく覆いながら連続していますが、それが包む器官、走行する部位によって異なる名称が付けられています。
オープンパス・メソッド(R)では、ファシャ全体を単一の器官と見なし、「膜連続体」と呼んでいます。
今期トレーニングでは、初回から前回(第10回)まで、この膜連続体を感覚し、その状態を見極めて効果的に働きかける実習をしてきました。
これまで、ファシャワーク(ファシャワーカー養成トレーニング時とは観点を変えて)、疼痛解消テクニック、頭蓋操作を学んできましたが、どの方法でも膜連続体を感覚することが基礎となります。
また今期は、この膜連続体の感受に関して、特別な指導を行ってきました。
「感覚すること」のレベルを、各テクニックの実習を通じて、「触察」から「傾聴」へと少しずつ上げてきました。
今回は、内臓の動き(受動的/外因的運動 + 能動的/内因的運動)を追う実習を行いましたが、これなどは完全に「傾聴」レベルの感受です。
* 今期は、上に挙げた末梢神経操作、内臓操作、脈管操作のうち、内臓操作にかぎってお伝えしますが、次期には他の2テクニックの指導も行っていく予定です。
今回の講義では、腹部内臓の形状と位置関係、腹膜と内臓との位置関係について説明しました。
最初に、腹部内臓(その並び方や形など)の図を、参加者の皆さんに描いていただきましたが、どなたが描いたものも、ほぼ正解に近い図でした。
その後、腹膜が内臓との関係でどのような構造になっているのかを図説しました。
この図は発生を表わしているわけではありません。
腹膜と内臓との位置関係を表わしています。発生
の過程で、腹膜外の臓器が腹膜の中に入ることは
ありません(出ることはありますが)。

肝臓、胃の高さでの発生を説明しました。

実習では、肝臓、胃、横行結腸、小腸、膀胱、上行結腸、下行結腸、腎臓などを触察し、それらの個々に特徴的な動きを感受(傾聴)しました。
今回は、「受動的/外因的運動」と「能動的/内因的運動」の合成運動が対象でした。
まずは胸骨弓を指標にして肝
臓の動きを捉えます。
吸気と共に肝臓が下降します。
わずかに前転しながら、右下
方へ押し出されます。

胃の動きを追います。
わずかに前転しながら、左側方へ転倒
します。

小腸領域を触察します。
ずいぶん不規則に動いています。

膀胱の動きを追います。
膀胱の動きは仙骨の動きに同調するので、それを
利用しながら。
後上方へ動いて戻ります。


上行結腸を両手指で挟み込むようにして捉えます。

第12肋骨を指標にして腎臓を捉えます。
前転、下方移動、外側回旋、下部が開きます
(外側移動)。
