2013年01月14日

触察の楽しみ(2)/腸腰筋を追う(過去ブログより再録)

背臥位になった被術者の腹直筋外縁から腰椎に向かって手指を差し込む。
差し込む角度は45度くらいがよい。
腸腰筋を触察する目的で、まずは指標となる腰椎をとらえる。
背臥位なら、被術者によっては腹壁からほんの1、2センチほどの位置に腰椎を発見できる。
腰椎が見つかったら、それに沿って背側(床の方向)へ指先をほんの少し移動させると、そこに腰筋がある。
それが本当に腰筋かどうかを確認したければ、被術者に天井へ向かって膝を少し持ち上げてもらえばよい(つまり股関節を屈曲させればよい)。

腰椎に沿いながら、そこから腰筋を頭方へたどる。
すると、横隔膜と接する辺りで腰筋はとぎれる。
腰筋は横隔膜に包みこまれて終わるように感じられる。
今度はそこから腰筋を逆方向へたどる。
腰筋が付着する腰椎はなだらかなカーブで腹壁に近づき、再び離れていく。
腰筋を腸骨の高さまでたどると、そこで腸骨筋と合し、鼠径靭帯へ向かう。

腸腰筋は鼠径靭帯をくぐるように走行する。
鼠径靭帯に付着する外腹斜筋腱膜と内腹斜筋のすぐ下を通るので、皮膚表面にかなり近く感じられる(鼠径靭帯の下で、腸腰筋は大腿神経管と同じ仕切りの中を走行するので、注意が必要)。

腸腰筋は鼠径靭帯をくぐった後、恥骨筋と並走しながら(縫工筋の内側を)内側へカーブし、大腿骨頭をかすめる。
その後、恥骨筋(と大腿神経管、大腿動脈、大腿静脈)の下層を通って小転子へ向かう。
恥骨筋の下へもぐるまでは触察は容易だが、それ以後は恥骨筋、長内転筋、短内転筋、大内転筋などにはばまれて、難度が増す。

ここで必要なのは、腸腰筋だけを働かせることで、最下層にあるこの筋を、上層にある他の筋群と識別することだ。
したがって被術者に指示する動きは、腸腰筋を働かせると同時に、内転筋群を休ませなければならない。
先ほど行ったように、天井へ向かって膝を少し持ち上げてもらうのでは、内転筋群は休まない。
その動作を行う際、膝が外側へ倒れないように内転筋群が働くからだ。

内転筋群の下層を走行する腸腰筋を確実に触察するために、被術者に股関節のわずかな「外旋+外転+屈曲」の動きを行ってもらう。
すると、内転筋群の下層で腸腰筋が活動するのが感じとれる。

小転子上で腸腰筋を触察するためには、被術者に膝を立ててもらう。
長内転筋と薄筋の隙間から短内転筋をかすめ、大内転筋を超えて小転子に到達するとよい。
腸腰筋をとらえていることを確認するために、被術者に股関節をわずかに屈曲してもらう。
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