私はただ、この「意識」という語が存在を表わすとする考え方を否定したいだけなのであり、この語は機能を表わすものだということを、私は断固として強調したいだけなのである。
私たちは、経験が表象することを「主観的」と言い、経験が表象されることを「客観的」と言う。表象するものと表象されるものとは、ここでは数の上で一つである。しかし、表象されることと表象することという二元性が、経験それ自体のなかにあるわけではないことを、私たちは銘記しなければならない。
…経験をつくる一般的な素材などというものは存在しない、と言わねばならない。経験される事物のなかにある「もろもろの性質」と同じだけ素材もあるのである。一片の純粋経験のどれもが何からつくられるのかと尋ねられれば、答えはいつも同じである。「それはあれから、ちょうど現われるままのものから、スペース、度の強さ、平たさ、茶色さ、重さ、その他いろんなものから作られている。」
…かつて「精神」spirit の起原であった気息、声門と鼻孔の間から外へ出てくる気息こそ、哲学者たちが彼らに意識として知られる存在物を構成してきたものの本質なのだ、と私は信じている。かの存在物なるものは架空のものであるが、具体的な思想は、充分に現実的なものである。しかし、具体的な思想は、事物と同じ素材からつくられているのである。
概念的知識は、知る経験自身の外部にある諸事物の存在によって―介在する経験によって、そして充足する目的物によって―もっぱらつくられる、と私たちは説明しなかったか。概念的知識は、その存在を構成しているこれら諸要素が生じない前に、存在しうるだろうか。そして、もしこの知識が存在しないとしたら、客観的照合がどうして起こりうるのであろうか。
(イギリス学派の観念論を批判して)私たちの生活は独我論の寄り集まりであって、そういう寄り集まりから、せめて言説の一世界でも厳密な論理に従って、組み立てうるものがあるとしたらひとり神様だけであろう。私の対象とあなたの対象とのあいだには、動的な流れは通じてはいない。私たちの心と心とが同じもののなかで出会うなどということはけっしてありえないのである。
私たちの心が少なくともいくつかの共通の対象のなかで出会う。ということに私が賛成する決定的な理由は、そう仮定しなければ、あなたの心がいやしくも存在していると想定する動機を私はもたなくなってしまう、ということである。なぜ私は、あなたの心を要請するのか。それは、私はあなたの身体が一定の仕方で活動しているのを見るからである。あなたの身振り、顔面の動き、言葉および一般に行動が、「表現的」である、だから、私は、あなたの身体も私自身の身体と同じように私のと同じような内面生活によって、行動させられているのを認めるのである。
もしあなたがあなたの世界のなかのある対象に変更を加えるなら、たとえば、私が現にそこにいるのに蝋燭の火を消すとすれば、事実上、私の蝋燭の火は消えてしまう。あなたが私の対象に変更を加えるからこそ、私はあなたが存在していると推測するのである。もしあなたの対象が私の対象と合一しないとすれば、もしあなたの対象が私の対象の在るその同じ場所に在るのでないとすれば、あなたの対象はどこか他の所に確かに在るということが立証されねばならない。ところが、あなたの対象には他に所在地があるとは認められない。だから、あなたの対象が在る場所は、そこであると思われているところ、つまり私の対象の在るのと同じ場所でなければならないのである。
あなたが内部から動かしたり感じたりするあなたの身体は、私が外部から見たり触れたりするあなたの身体と同じ地点になければならない。「そこ」は、私にとっては、私が私の指を置く場所を意味する。もしあなたが、私が私の指をあなたの身体の一点に置くとき、私の指が触れているのは私の感覚における「そこ」であることを感じないとすれば、それではあなたはいったいどこに私の指を感じるのか。
「意識的」であるということは、単に在ることを意味するのではなく、報告されてあること、知られてあること、そういうあり方に自分の存在が加わっていることに気づくことを意味するのであって、このことこそ、私有的経験が〔純粋経験の〕後につづくときに行なわれることなのである。
分類は、私たちのそのときどきの目的に左右される。ある目的のためには、事物を一方の組の関係のなかに入れるのが便利であり、他の目的のためには、他方の組の関係のなかに入れるのが便利である。
ダイアモンドの貴重さはその宝石の性質なのか、それとも私たちの心のなかの感じなのか。実際には、私たちは、そのときどきの私たちの思想の方向に応じて、それをいずれか一方の意味に採ることもあれば、両方の意味に採ることもある。
2013年02月10日
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