小円筋と棘下筋の短縮や硬化があると、背臥位の肩90°外転位での内旋で、肩甲骨が代償的に前傾する。前傾を防ぐと外旋筋群の短縮が明らかになる。外旋筋の短縮は、上腕骨頭の過度な前方と上方滑りの一因となる。上腕骨頭の後方滑りの制限と過度な前方滑りは、インピンジメント症候群の要因となる。後方関節包の伸張性の低下は屈曲時のインピンジメントの一因になる。
小円筋と大円筋、上腕三頭筋長頭、上腕骨で囲まれた部分を外側腋窩隙といい、腋窩神経と後上腕回旋動・静脈が通る。小円筋と大円筋、上腕三頭筋長頭で囲まれた部分は内側腋窩といい、肩甲回旋動・静脈が通り、肩甲下神経が走る(通り抜けない)。
棘下筋と小円筋は、棘上筋とともに上腕骨頭を下制させる主要な外旋筋である。…三角筋後部線維は強力な外旋筋であり、棘下筋や小円筋が弱いと、上腕骨頭の上方滑りを引き起こす。
被検者が肩関節を外転するとき、三角筋の活動が優位になると回旋筋腱板 rotator cuff(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)による下方への牽引が不足し、上腕骨頭の上方滑りあるいは肩峰とのインピンジメント(衝突)を生じる場合がよくある。同じ被検者が上腕骨を屈曲した場合には、屈曲時の前部線維の活動量が外転時の三角筋全体の1/3程度なので、運動障害は外転時よりはっきりと現れない。
三角筋は、強力な筋であり、安静位から上腕骨頭を肩峰の方へ牽引する。したがって、上腕骨頭を下制する筋群、主に棘上筋、棘下筋、小円筋と肩甲下筋が、三角筋による近位への牽引力を適切に相殺する必要がある。
肩関節内旋の際、大胸筋は肩甲下筋よりも優位に働きやすくなる。肩甲下筋は骨頭を後方に滑らせながら内旋するが、大胸筋は骨頭を前方に引きながら内旋する。大胸筋が短縮したり優位に働くと、大胸筋の活動は上腕骨頭の過度な前方滑りを引き起こす原因となる。
広背筋が短縮すると、肩屈曲可動域が制限される。さらに、腹筋の緊張が不足している場合には、代償的に腰椎は伸展する。腰椎伸展時に腰痛を訴える患者の広背筋が短縮または硬縮しており、その患者が頭部以上の高さのものにリーチ動作をするとやはり腰痛を引き起こす。
…腹直筋が外腹斜筋よりも優位になると、しばしば胸部の下制を伴う。このような患者に外腹斜筋の運動を行わせると、外腹斜筋の収縮が困難で、胸部の下制あるいは体幹の軽い屈曲を伴い、腹直筋の収縮が顕著に早くから起こる。
開口は、はじめに外側翼突筋が下顎頭を前に引き、次いで下顎角近くの回転運動の中心の周りを下顎骨が回って行われる。回転運動のはじめには、顎舌骨筋、顎二腹筋、オトガイ舌骨筋が働く。
鼠径靭帯の背側は、腸恥筋膜弓で2つの間隙に分けられる。外側の筋裂孔は腸腰筋(大・小腰筋、腸骨筋)と大腿神経が通り、内側の血管裂孔は大腿動静脈とリンパ管が通る。
肩甲下筋と関節包は、肩甲上腕関節の前方の安定性を与えている。また、肩甲下筋は、骨頭を後方へ引く作用をするので、上腕骨頭の前方・上方滑りを引き起こす筋群に拮抗する作用を持つ。…内旋筋としては、大胸筋と広背筋のように大きく強力な筋があるので、しばしば肩甲下筋の活動は劣勢になり、結果として上腕骨頭の過度な前方滑りが生じ、インピンジメント症候群の前兆となる。
腹横筋は胸腰筋膜に付着しているので、その収縮は腰椎の安定化にも寄与する。…腹横筋は、立位姿勢で上下肢を動かす際、姿勢保持のために働く第一の腹筋である。
外腹斜筋の線維の走行は基本的には外側上後方から内側下前方に向かうが、下部の3本の肋骨からくる線維は腸骨稜の外唇に対してほぼ垂直に走る。また、起始部は第5−9肋骨の間では前鋸筋の筋尖と、第10−12肋骨の間では広背筋の筋尖とかみ合わさる。
腹直筋は胸骨に付着しているため、この筋の短縮あるいは硬化は、胸部陥没( depressed chest )および胸椎後彎症の一因となる。
腹直筋は腹直筋鞘 rectus sheath(外腹斜筋と内腹斜筋および腹横筋の腱膜によって形成される)に包まれているが、筋膜隙によって筋は鞘と隔てられているので、収縮運動が制限されることはない。また、腹直筋鞘は他の腹筋群の停止部でもあるため、他の腹筋が活動すれば腹直筋も活動する。
2013年04月07日
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