12月11日、第9期オープンパス認定
パルペーション・トレーニング第24回が開催されました。
今回は、浅指屈筋、深指屈筋、長母指外転筋、長母指伸筋、短母指伸筋の5筋を触察実習しました。
今回は最初に、手指の関節の略名について話しました。
手指に関わる筋は多くの関節を越えて走行し、それらに影響を与えます(多くは運動させます)。
1つの筋が影響を与える関節の名をすべて日本語で言うと、かなり大変です。
そうかと言って、日本語を略して使うと(試してみました)かえって混乱するので、略さないほうがよいと感じます。
そこで解剖学で通常使われる英語の略名を使うのが、やはりよいと思います。
ホワイトボードに手指の絵を描き、各関節にCM、MP、IP、PIP、DIP
(注)と略名を付けた上で解説しました。
(注)CM:carpal-metacarpal、MP:metacarpal-phalanx、IP:inter-phalanges、PIP:prox.-inter-phalanges、DIP:dist.-inter-phalanges触察実習では、浅指屈筋、深指屈筋、長母指外転筋の3筋についてはペアになって、長母指伸筋、短母指伸筋の2筋についてはセルフで行いました。
【浅指屈筋】
起始:上腕骨内側上顆(上腕頭)、尺骨粗面(尺骨頭)、橈骨近位前面(橈骨頭)
停止:示指〜小指の中節骨底掌側
【深指屈筋】
起始:尺骨内側面、前腕骨間膜
停止:示指〜小指の末節骨底掌側

浅指屈筋は主にPIP関節を屈曲させますが、当然、通過するMP関節(屈曲)、手関節(掌屈)の運動にも関わります。
浅指屈筋は、示指から小指までを個別に動かせます。
各指を個別に働かせて、停止部である中節骨底掌側から筋腹まで辿っていくと、各指の働きに応じて活動する部分が異なっています。
示指は筋腹の橈側、小趾は尺側、中指と環指はその中間が活動します。
浅指屈筋は中間層を走行する筋で、手根部の近位、長掌筋(表層)腱の下層を、示指、中指、環指、小指の各腱が分化した状態で通過します。
通常、
解剖学書には、長掌筋腱の尺側を通ると記載してありますが、正しくは「尺側寄り」です。中指、環指の腱が長掌筋腱のすぐ下層を、示指、小指の腱がその下層を走行します。
そして個人差はありますが、
長掌筋腱の真下を通るのが中指の腱である場合が多いです(示指の腱が真下を通る場合もあります)。
それなので、
環指、小指の腱は長掌筋腱の尺側で、示指、中指の腱は橈側で触察したほうが、各腱を正確に鑑別できます(注)。
(注)中指の腱を触察する場合には、長掌筋腱を少し尺側に寄せながら行います。
すべての腱を長掌筋腱の尺側から触察しようとすると、中指と環指の腱の鑑別が難しくなります。浅指屈筋の触察/小指のPIP関節を働かせながら

深指屈筋は主にDIP関節を屈曲させますが、通過するPIP関節(屈曲)、MP関節(屈曲)、手関節(掌屈)の運動にも関わります。
またDIP関節の屈曲は、深指屈筋だけが行えます。
深指屈筋は、浅指屈筋のようには各指を個別に働かせることが(示指以外は)できないとされています。
ところが9期生の多くの方々が、簡単に働かせていました。
そして私自身も(今回は参加人数が奇数となったので、私もペア触察に加わりました)、ペアの相手の方に触察していただくうちに、個別に動かせるようになってしまいました!
浅指屈筋も深指屈筋も、それぞれPIP関節、DIP関節を働かせるためのホールディングが大切です。
それが上手くできれば、問題なく触察、鑑別が可能です。
深指屈筋の触察/中指〜小指のDIP関節を働かせながら

【長母指外転筋】
起始:尺骨背側面(長母指伸筋の近位)、前腕骨間膜、橈骨背側面
停止:母指中手骨底掌側

長母指外転筋の筋腹は前腕の背側に位置するのですが、母指CM関節を掌側に外転させます。
腱が前腕の背側から掌側へと回り込んでいるのです。
長母指外転筋はCM関節を掌側外転させる他に、手関節を掌屈させます。
長母指外転筋、長母指伸筋、短母指伸筋の触察は、相互に走行を確認しながら行いたいので、この3筋については前腕を回内位にして開始しました。
長母指外転筋を働かせる場合には、テーブルに手掌を臥せて(回内位)置いた上で、母指を示指の下に「しまう」ようにして、その位置の母指でテーブルを押します。
テーブルの抵抗があるので、大きく活動します。
【長母指伸筋】
起始:尺骨背側面(示指伸筋と長母指外転筋の間)
停止:母指末節骨底背側
【短母指伸筋】
起始:橈骨背側面遠位1/3、前腕骨間膜
停止:母指基節骨底背側

長母指伸筋と短母指伸筋は、長母指外転筋の続きで触察しましたが、この2筋についてはセルフで行いました。
長母指伸筋は、MP関節とIP関節を伸展させます。
テーブルに手を臥せて置いた状態で母指を持ち上げると、ちょうどこの動きとなります。
ただし、示指に沿うように持ち上げないと(つまり橈側外転しないように持ち上げないと)、短母指伸筋が反応して、筋腹のところで鑑別しにくい場合があります。
長母指伸筋はその他に、補助的にですが、手関節を背屈させます。
短母指伸筋は主に母指MP関節を伸展させますが、その他に、母指CM関節を橈側外転、手関節を補助的に背屈させます。
触察では、長母指伸筋と鑑別するために、母指CM関節を橈側外転させながら行いました。
長母指伸筋腱と短母指伸筋腱によって形成されるタバコ窩について少し話しました。
橈骨動脈、背側指神経がタバコ窩を通過します。
今回は最後に、触察を行う際の指使いについて、少し話しました。
触察を行う際に、探るような、細かくタップするような指使いをすると、筋を歪め、筋群の整列を乱します。当然、その部位は触察しにくい状態になってしまいます(
驚くほどです!)。
反対に、
筋線維に沿った、最小限のタッチを用いると、筋の状態を整え、各筋を鑑別しやすくします。前者の方法を行うと、触れた筋、筋群の関わる関節は、即座に可動域が狭くなり、後者の方法だと広がります。
肩甲骨周囲、上腕、前腕の筋群を対象に、簡単な実演も行いました。
少し触れるだけで、その触れ方が前者のようだと関節の動きが悪くなり、後者のようだと良くなりました。
オープンパス・メソッド(R)の触察法を学習し、その習得度が増すと(「熟練」まで行かなくても)、
触察によって筋の状態を整えること、筋群を整列させること、触察された者が触察された自分の筋を明確に体感できるようになること、などが可能となります。受講生の皆さん、ぜひそのレベルを目指してください!