2015年02月06日

第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第29回

2月5日、第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第29回が開催されました。
今回は、咬筋、内側翼突筋、外側翼突筋、前頭筋、後頭筋、眼輪筋、皺眉筋、上眼瞼挙筋、鼻根筋、鼻筋、鼻中隔下制筋、上唇鼻翼筋、上唇挙筋、小頬骨筋、大頬骨筋、口角挙筋、笑筋、頬筋、口角下制筋、下唇下制筋、オトガイ筋、口輪筋の22筋を触察実習しました。
今回で、135筋の触察を行い、全カリキュラムを終了しました。
次回は、135筋の触察のうち、特に難しかったものを復習し、進級試験(9期生の皆さんは、全員がファシャワーカー養成トレーニングへ進級希望です)に備えます。

今回は、22筋の中で、内側翼突筋と外側翼突筋の触察について、特に詳しくお伝えしました。
両筋の起始部である蝶形骨については、時間をかけてその様々な部分を触察しました。

外側翼突筋上頭の起始部である蝶形骨大翼外側面下部
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外側翼突筋下頭の起始部である翼状突起外側板外側面
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内側翼突筋の起始部である翼状突起外側板内側面
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途中、時間に余裕があったので、触察の授業のはずですが、施術の方法もお伝えしました。
蝶形骨の操作と、それによって顔面構造を変化させる方法、骨盤や踵骨の位置を変化させることが可能なことなどを説明しました。
続きは、インテグレーティブワーカー養成トレーニングで話します。(笑)

2015年02月01日

第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第28回

1月29日、第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第28回が開催されました。
今回は、頭板状筋、頭半棘筋、広頸筋、顎二腹筋、顎舌骨筋、胸骨舌骨筋、肩甲舌骨筋、側頭筋の8筋を触察実習しました(今回で、113筋の触察を行ったことになります)。

今回は触察実習の他に、ホールディングの仕方についてお伝えしました。
例えば、ホールディングが安定していないと、被触察者は安心して身体をあずけることができず、どうしても余計な力が入ってしまいます。
そうなると、目標部位に手指が届かなかったり、隣接し合う器官を鑑別できなかったりします。


【頭板状筋】
起始:項靭帯下半、第4頸椎〜第3・4胸椎
停止:上項線外側1/3、側頭骨乳様突起(胸鎖乳突筋の下層)

【頭半棘筋】
起始:第4〜6頸椎関節突起、第7頸椎横突起尖端部、第1〜6・7胸椎横突起尖端部
停止:後頭骨(上項線と下項線の間)

頭板状筋と頭半棘筋の図ですが、両図に描かれた肩甲骨は共に下制しすぎています。
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頭板状筋と頭半棘筋については、僧帽筋も加えた層構造(それらの関係性)について説明しました。
もっとも表層にある僧帽筋については、問題なく他の2筋と鑑別できます。
頭板状筋と頭半棘筋の場合には、これら2筋の作用の違いを利用して鑑別する必要があります。
特に伸展と回旋において違いがあるので、それを利用して行います。
違いは以下のとおりです。
伸展において:頭板状筋は頭頸部を、頭半棘筋は頭部を伸展させます。
回旋において:頭板状筋は同側に、頭半棘筋は反対側に回旋させます。

頭板状筋を触察しています。
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頭半棘筋を触察しています。
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【広頸筋】
起始:大胸筋・三角筋前部筋膜
停止:下顎骨下縁、顔面下部の皮膚

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頸部筋群の中では、この広頸筋だけが皮筋です。
またこの筋には、大きさ、形状にかなりの個人差があります。
口角を後方、下方に引いて、口を「へ」の字に曲げると、側方に大きく張り出します。


【顎二腹筋】
起始:前腹;二腹筋窩(下顎骨下縁内側の圧痕)/後腹;側頭骨乳突切痕
停止:中間腱として舌骨小角付近の線維性滑車によって支持される

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舌骨小角に触れようとすると、それを覆うように線維組織があります。
弾性軟骨のような触感ですが、それが顎二腹筋の停止部である線維性滑車です。

線維性滑車から二腹筋窩に向かうのが前腹、乳様突起の深層(乳突切痕)に向かうのが後腹です。
触察すると、前腹にはかなり個人差があります。
左右の前腹の作る角度やそれぞれの形状に、しばしば違いが感じられます。


【顎舌骨筋】
起始:下顎骨(オトガイ結合〜顎舌骨筋線全長)
停止:舌骨体、オトガイ結合から舌骨に延びる線維縫線

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顎舌骨筋は、顎二腹筋のすぐ下層にある薄い板状の筋です。
筋線維は、オトガイ結合から舌骨体をつなぐ線維縫線に向かって走行します。


【胸骨舌骨筋】
起始:鎖骨内側端後面
停止:舌骨体下縁

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胸骨舌骨筋は、甲状軟骨に沿って、そのすぐ外側を走行します。
胸鎖乳突筋の深層、鎖骨内側端後面に起始し、舌骨に向かいます。


【肩甲舌骨筋】
起始:肩甲骨上縁、上肩甲横靭帯(肩甲切痕を横切る)
停止:下腹→鎖骨に線維を付着→中間腱→上腹(胸骨舌骨筋外側縁と接する)→舌骨体下縁外側部

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肩甲舌骨筋は、起始部の触察が少し難しかったかもしれません。
鎖骨の頭側(僧帽筋下行部内側)から肩甲骨上縁(上角外側)に手指を差し入れれば、触れることが可能です。


【側頭筋】
起始:側頭窩、側頭筋膜内面
停止:下顎骨筋突起尖端、下顎枝前縁

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側頭筋は、側頭窩(起始)という窪みに嵌るように付着しているので、その外縁を正確に辿ることが可能です。
停止部である筋突起は、大きく開口すればその先端を確認することが可能です。

2015年01月23日

第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第27回

1月22日、第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第27回(講師:斎藤瑞穂、小川隆之)が開催されました。

今回は、前回にデモンストレーションを行った後頭下筋群(小後頭直筋、大後頭直筋、下頭斜筋、上頭斜筋)の触察実習と、パルペーション模擬テストを行いました。


後頭下筋群の実習では、講師のリードでエア・パルペーションを行った後、実習に入りました。
エア・パルペーションでは、イメージ展開を速めることで、かなりの時間短縮ができます。
受験前の予習法としては、最適だと思います。
受講生の方々にはお勧めの方法です。

【小後頭直筋】
起始:環椎後結節
停止:後頭骨下項線内側部、下項線と大後頭孔の間

【大後頭直筋】
起始:軸椎棘突起
停止:後頭骨下項線外側部とその下方

【下頭斜筋】
起始:軸椎棘突起
停止:環椎横突起下後部

【上頭斜筋】
起始:環椎横突起上面
停止:後頭骨上項線と下項線の間(頭半棘筋の外側)

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後頭下筋群は、環椎後頭関節、環軸関節の動きを制御します。
後頭下筋群の上層には、多数の筋群が走行するので、触察を行うには工夫が必要です。

小後頭直筋、大後頭直筋とも、働きは環椎後頭関節の伸展および同側回旋ですが、両筋とも、視線を上に向けるだけで働きます。
下頭斜筋の主な働きは、環軸関節の同側回旋ですが、視線を同側の横方向へ向けるだけで働きます。
上頭斜筋の働きは、環椎後頭関節の伸展、同側側屈、反対側回旋ですが、反対側の上方を見上げるように視線を動かす(電線に止まったスズメを見上げる感じ)だけで働きます。
後頭下筋の触察を行うには、頸部は軽く伸展させた状態で、視線の動きを指示すると、上層を走行する筋群との鑑別が容易になります。

後頭下筋群のうち、小後頭直筋と大頭直筋は硬膜に付着しています。
ですから、これら2筋にファシャワークを行うことで、脊柱や仙骨、骨盤、下肢に対して大きな影響を及ぼすことができます。

また後頭下筋群に対して疼痛解消テクニックを用いることで、後頭部の痛みや肩コリ、目の疲れ、耳鳴りなどを解消することも可能です。

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さて、パルペーション模擬テストでは、以下の筋群をテストしました。
前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋、最長筋、腸肋筋、棘筋、大腰筋、腸骨筋、半腱様筋、半膜様筋、大腿二頭筋、大内転筋、長内転筋、恥骨筋、薄筋、短内転筋、梨状筋、大腿方形筋、内閉鎖筋、上双子筋、下双子筋、膝窩筋、後脛骨筋、長趾屈筋、長母趾屈筋、僧帽筋、長掌筋、橈側手根屈筋、尺側手根屈筋、棘上筋、棘下筋。
・・・本番まで、もうひと頑張りが必要かもしれません。

2015年01月09日

第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第26回

1月8日、第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第26回が開催されました。
今回を入れて、あと5回で第9期も終了します。
9期生の方々は全員が進級試験(ファシャワーカー養成トレーニングに進級するための試験。100筋以上の触察に挑戦し、8割以上できなければ合格できない)の受験を希望されていることもあって、講師側から、今回は模擬テストを行ってはどうかと提案しました。
模擬テストの目的は、試験の進め方を前もって知ること、試験の形式に慣れておくこと、これまで習得した触察テクニックを復習することなどです。
ところが、準備ができていないという意見が出て、模擬テストは次回に行うということで、「模擬テストの模擬テスト」を行うことになりました。(笑)

3名の方が「模擬テストの模擬テスト」に挑戦されました。
大胸筋、縫工筋、肩甲下筋が対象筋でしたが、どなたも10点満点中5点以下という結果になりました。
本試験は3月初旬ですので、まだ約2ヶ月あります。
何とか全員が合格して、そろって進級できるように頑張ってほしいものです。


「模擬テストの模擬テスト」の後は、小指球筋群の触察実習をしました。
小指外転筋、短小指屈筋、小指対立筋の順に行いました。
3筋のうち、前2者は浅層に、後者は深層に位置します。

【小指外転筋】
起始:豆状骨、屈筋支帯
停止:小指基節骨底尺側

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小指外転筋は豆状骨に起始しますが、豆状骨に停止する尺側手根屈筋が小指外転筋の安定筋として働きます。
小指外転筋を働かせると、尺側手根屈筋も同時に働きます(尺側手根屈筋の作用である手関節の尺屈、掌屈を行わなくても)。

小指外転筋の作用は小指MP関節の外転です。
小指外転筋の筋腹を触察しています。
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【短小指屈筋】
起始:有鉤骨鉤、屈筋支帯
停止:小指基節骨底掌側

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短小指屈筋を触察しています。
短小指屈筋の作用は小指MP関節の屈曲です。
小指MP関節を屈曲する際に、浅指屈筋、深指屈筋の作用を抑制するために、手関節を掌屈位でホールドしています。
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【小指対立筋】
起始:有鉤骨鉤、屈筋支帯
停止:小指中手骨尺側縁

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小指対立筋の作用は小指CM関節の対立です。
小指対立筋を触察しています。
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小指球筋群を触察実習した後は、後頭下筋群の触察デモを行いました。
時間切れで、実習は次回に持ち越しとなりました。

【大後頭直筋】
起始:軸椎棘突起
停止:後頭骨下項線外側部とその下方

【小後頭直筋】
起始:環椎後結節
停止:後頭骨下項線内側部、下項線と大後頭孔の間

【上頭斜筋】
起始:環椎横突起上面
停止:後頭骨上項線と下項線の間(頭半棘筋の外側)

【下頭斜筋】
起始:軸椎棘突起
停止:環椎横突起下後部

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後頭下筋群の触察手順です(小後頭直筋、大後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋の順)。

今回は、マックス君が後頭下筋群の触察デモで活躍しました。
少しストレートネックなのですが。
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2014年12月21日

第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第25回

12月18日、第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第25回が開催されました。
今回は、示指伸筋、長母指屈筋、短母指外転筋、短母指屈筋、母指対立筋、母指内転筋、短掌筋の7筋を触察実習しました。


【示指伸筋】
起始:尺側背側面遠位、前腕骨間膜
停止:示指に向かう総指伸筋腱

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前回の触察対象である長母指外転筋、長母指伸筋と並ぶ形で尺骨に起始しています。
3筋の中で、示指伸筋が最遠位に位置します。
示指伸筋は、示指のMP、PIP、DIP関節を伸展させます。
また手関節を補助的に背屈させます。

下の画像では、第3〜5指を屈曲位にしていますが、こうすると、第3〜5指の総指伸筋腱は遠位に牽引されます。
各指に向かう総指伸筋腱の間には腱間結合があるので、屈曲していない第2指の腱も、他の指の腱と共に遠位に牽引されます。
この肢位で第2指MP関節の伸展運動を行うと、第2指に向かう総指伸筋腱は弛んで蛇行し、働くのは示指伸筋だけです。
画像では、弛んで蛇行した第2指の総指伸筋腱を確認しています。
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示指伸筋の起始部を確認しています。
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【長母指屈筋】
起始:橈骨前側面、前腕骨間膜
停止:母指末節骨底掌側

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長母指屈筋は、IP、MP関節を屈曲させます。
また手関節を掌屈させます。
長母指屈筋の停止腱は、母指内転筋の上層、短母指屈筋と母指対立筋の下層を通過します。

長母指屈筋は、深指屈筋と同層にあり、前腕掌側中央あたりで接しています。
長母指屈筋の尺側縁が鑑別しにくい場合には、深指屈筋を働かせます。

母指IP関節をの屈曲(母指MP、CM関節は固定)を指示しながら、長母指屈筋を触察しています。
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【短母指外転筋】
起始:舟状骨結節、大菱形骨、屈筋支帯橈側前面
停止:母指基節骨底、橈側種子骨

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母指外転筋は、母指CM関節を外転させます。

短母指外転筋の起始部である舟状骨結節を触察しています。
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短母指外転筋を触察しています。
画像では見えませんが、母指CMを掌側外転しています。
手関節を掌屈させるのは、長母指外転筋を弛緩させるためです。
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【短母指屈筋−浅頭】
起始:屈筋支帯
停止:母指基節骨底、橈側種子骨
【短母指屈筋−深頭】
起始:大菱形骨、小菱形骨、有頭骨
停止:橈側種子骨

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短母指屈筋は、母指MP関節を屈曲させます。
短母指外転筋と短母指屈筋が母指球筋の中では、表層にあります。
ただし、短母指屈筋の橈側縁に少し被さるように短母指外転筋が走行しています。

短母指屈筋を触察しています。
手関節を掌屈させていますが、長母指屈筋を弛緩させるためです。
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【母指対立筋】
起始:大菱形骨、屈筋支帯
停止:母指中手骨橈側縁

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母指対立筋は、母指CM関節を対立させます。
母指対立筋は、母指球筋の中では中間層に位置します。

母指対立筋の触察では、まず母指と小指を対立運動させて、その動きを覚えてもらい、同じ動きを母指CM関節だけで行わせ、触察します。
つまり、MP、IP関節を固定させた状態で、対立運動をさせます。

母指対立筋の停止部を触察しています。
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【母指内転筋】
起始:(斜頭)有頭骨、中指・示指中手骨底掌側
   (横頭)中指中手骨幹掌側
停止:母指基節骨底、尺側種子骨

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母指内転筋は、母指CM関節を内転させます。
母指内転筋は、母指球筋の中では最深層に位置します。

母指内転筋斜頭を触察しています。
母指CM関節を掌側外転位からの内転させながらの触察です。
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【短掌筋】
起始:手掌腱膜
停止:小指球の皮膚

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短掌筋は、小指球の皮膚を手掌中央に牽引します。
物を握る際に、小指球を高めて握りをしっかりさせます。

小指球の尺側の皮膚が凹んで見えますが、その裏側に短掌筋が付着しています。
短掌筋が活動(短縮)すると、小指球の皮膚が引かれて盛り上がります。
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バスケットボールくらいの大きさの物を持つと、こうなります。
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ところで今回、トレーニングの終了間際にチラッと出た話ですが、身体に関わる専門業種の中で、上肢の解剖学を得意とする業種と下肢の解剖学を得意とする業種があるということです。
例えば、これまで本トレーニングにご参加くださったPT、OTの方々の話では、「PTは下肢のほうが、OTは上肢のほうが得意」という傾向があるのだそうです。

ボディワーク業界では、技術上の必要に迫られて、そうしたことはあり得ません。
ボディワークでは、膜連続体を主な対象とするので、下肢と上肢を個別に捉えてしまうと、施術自体が成立しないのです。

技術上、上肢を中心とした動作であろうと、下肢の動作であろうと、他部位との〈コーディネーション co-ordination〉を踏まえた観点から対応しなければなりません。
また膜連続体の構造上(全身に連続しているので)、どの部位をも埒外にはすることはできません。

ただし、その連続性を覚知できれば、どの部位からでも全身に直接的な影響を及ぼすことが可能です。
例えば今回の触察対象筋で言うと、示指伸筋に働きかけることで、頸部、下肢部の回旋を促し、体幹部に捻じれを修正できます(長母指外転筋、長母指伸筋も含めて働きかければ、さらに効果的です)。
長母指屈筋に働きかけることで、頸部、体幹部、下肢部の屈伸運動に影響を及ぼすことが可能です(それもかなり正確に)。

2014年12月12日

第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第24回

12月11日、第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第24回が開催されました。
今回は、浅指屈筋、深指屈筋、長母指外転筋、長母指伸筋、短母指伸筋の5筋を触察実習しました。


今回は最初に、手指の関節の略名について話しました。
手指に関わる筋は多くの関節を越えて走行し、それらに影響を与えます(多くは運動させます)。
1つの筋が影響を与える関節の名をすべて日本語で言うと、かなり大変です。
そうかと言って、日本語を略して使うと(試してみました)かえって混乱するので、略さないほうがよいと感じます。
そこで解剖学で通常使われる英語の略名を使うのが、やはりよいと思います。
ホワイトボードに手指の絵を描き、各関節にCM、MP、IP、PIP、DIP(注)と略名を付けた上で解説しました。

(注)CM:carpal-metacarpal、MP:metacarpal-phalanx、IP:inter-phalanges、PIP:prox.-inter-phalanges、DIP:dist.-inter-phalanges


触察実習では、浅指屈筋、深指屈筋、長母指外転筋の3筋についてはペアになって、長母指伸筋、短母指伸筋の2筋についてはセルフで行いました。


【浅指屈筋】
起始:上腕骨内側上顆(上腕頭)、尺骨粗面(尺骨頭)、橈骨近位前面(橈骨頭)
停止:示指〜小指の中節骨底掌側

【深指屈筋】
起始:尺骨内側面、前腕骨間膜
停止:示指〜小指の末節骨底掌側

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浅指屈筋は主にPIP関節を屈曲させますが、当然、通過するMP関節(屈曲)、手関節(掌屈)の運動にも関わります。

浅指屈筋は、示指から小指までを個別に動かせます。
各指を個別に働かせて、停止部である中節骨底掌側から筋腹まで辿っていくと、各指の働きに応じて活動する部分が異なっています。
示指は筋腹の橈側、小趾は尺側、中指と環指はその中間が活動します。

浅指屈筋は中間層を走行する筋で、手根部の近位、長掌筋(表層)腱の下層を、示指、中指、環指、小指の各腱が分化した状態で通過します。
通常、解剖学書には、長掌筋腱の尺側を通ると記載してありますが、正しくは「尺側寄り」です。
中指、環指の腱が長掌筋腱のすぐ下層を、示指、小指の腱がその下層を走行します。
そして個人差はありますが、長掌筋腱の真下を通るのが中指の腱である場合が多いです(示指の腱が真下を通る場合もあります)。
それなので、環指、小指の腱は長掌筋腱の尺側で、示指、中指の腱は橈側で触察したほうが、各腱を正確に鑑別できます(注)

(注)中指の腱を触察する場合には、長掌筋腱を少し尺側に寄せながら行います。
すべての腱を長掌筋腱の尺側から触察しようとすると、中指と環指の腱の鑑別が難しくなります。


浅指屈筋の触察/小指のPIP関節を働かせながら
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深指屈筋は主にDIP関節を屈曲させますが、通過するPIP関節(屈曲)、MP関節(屈曲)、手関節(掌屈)の運動にも関わります。
またDIP関節の屈曲は、深指屈筋だけが行えます。

深指屈筋は、浅指屈筋のようには各指を個別に働かせることが(示指以外は)できないとされています。
ところが9期生の多くの方々が、簡単に働かせていました。
そして私自身も(今回は参加人数が奇数となったので、私もペア触察に加わりました)、ペアの相手の方に触察していただくうちに、個別に動かせるようになってしまいました!

浅指屈筋も深指屈筋も、それぞれPIP関節、DIP関節を働かせるためのホールディングが大切です。
それが上手くできれば、問題なく触察、鑑別が可能です。

深指屈筋の触察/中指〜小指のDIP関節を働かせながら
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【長母指外転筋】
起始:尺骨背側面(長母指伸筋の近位)、前腕骨間膜、橈骨背側面
停止:母指中手骨底掌側

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長母指外転筋の筋腹は前腕の背側に位置するのですが、母指CM関節を掌側に外転させます。
腱が前腕の背側から掌側へと回り込んでいるのです。
長母指外転筋はCM関節を掌側外転させる他に、手関節を掌屈させます。

長母指外転筋、長母指伸筋、短母指伸筋の触察は、相互に走行を確認しながら行いたいので、この3筋については前腕を回内位にして開始しました。
長母指外転筋を働かせる場合には、テーブルに手掌を臥せて(回内位)置いた上で、母指を示指の下に「しまう」ようにして、その位置の母指でテーブルを押します。
テーブルの抵抗があるので、大きく活動します。


【長母指伸筋】
起始:尺骨背側面(示指伸筋と長母指外転筋の間)
停止:母指末節骨底背側

【短母指伸筋】
起始:橈骨背側面遠位1/3、前腕骨間膜
停止:母指基節骨底背側

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長母指伸筋と短母指伸筋は、長母指外転筋の続きで触察しましたが、この2筋についてはセルフで行いました。

長母指伸筋は、MP関節とIP関節を伸展させます。
テーブルに手を臥せて置いた状態で母指を持ち上げると、ちょうどこの動きとなります。
ただし、示指に沿うように持ち上げないと(つまり橈側外転しないように持ち上げないと)、短母指伸筋が反応して、筋腹のところで鑑別しにくい場合があります。
長母指伸筋はその他に、補助的にですが、手関節を背屈させます。

短母指伸筋は主に母指MP関節を伸展させますが、その他に、母指CM関節を橈側外転、手関節を補助的に背屈させます。
触察では、長母指伸筋と鑑別するために、母指CM関節を橈側外転させながら行いました。

長母指伸筋腱と短母指伸筋腱によって形成されるタバコ窩について少し話しました。
橈骨動脈、背側指神経がタバコ窩を通過します。


今回は最後に、触察を行う際の指使いについて、少し話しました。
触察を行う際に、探るような、細かくタップするような指使いをすると、筋を歪め、筋群の整列を乱します。
当然、その部位は触察しにくい状態になってしまいます(驚くほどです!)。
反対に、筋線維に沿った、最小限のタッチを用いると、筋の状態を整え、各筋を鑑別しやすくします。
前者の方法を行うと、触れた筋、筋群の関わる関節は、即座に可動域が狭くなり、後者の方法だと広がります。
肩甲骨周囲、上腕、前腕の筋群を対象に、簡単な実演も行いました。
少し触れるだけで、その触れ方が前者のようだと関節の動きが悪くなり、後者のようだと良くなりました。

オープンパス・メソッド(R)の触察法を学習し、その習得度が増すと(「熟練」まで行かなくても)、触察によって筋の状態を整えること、筋群を整列させること、触察された者が触察された自分の筋を明確に体感できるようになること、などが可能となります。
受講生の皆さん、ぜひそのレベルを目指してください!

2014年11月22日

第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第23回

11月20日、第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第23回が開催されました。
今回は、総指伸筋、円回内筋、回外筋、長掌筋、橈側手根屈筋、尺側手根屈筋の6筋を触察実習しました。


【総指伸筋】
起始:上腕骨外側上顆
停止:示指〜小指基節骨底−(中心束)→中節骨底−(外側束→終末腱)→末節骨

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総指伸筋を起始部近くで触察しています。
総指伸筋は示指から小指に停止腱を伸ばしますが、示指、小指には総指伸筋の他に、それぞれ示指伸筋、小指伸筋が停止しています。
画像のように示指、小指を屈曲位にすることで、示指伸筋、小指伸筋の働きを抑制できます。
総指伸筋の各停止腱は腱間結合で繋がれていますので、画像のように示指、小指を屈曲位で固定すると、中指、環指の停止腱も遠位に牽引されて弛むために働きが抑制されます。

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【円回内筋】
起始:上腕骨内側上顆、尺骨鉤状突起
停止:橈骨中央外側

円回内筋、橈側手根屈筋、長掌筋、尺側手根屈筋の画像
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円回内筋を触察しています。
手関節を掌屈しているのは、円回内筋と同様に回内の働きを持つ橈側手根屈筋と長掌筋を弛めて抑制するためです。
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【回外筋】
起始:上腕骨外側上顆、尺骨
停止:橈骨上部

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回外筋を触察しています。
回外筋は前腕背側に位置する筋群の中で最深層にあるので、手関節を背屈することで上層の筋群を弛めまて触察しやすい状態を作ります。
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【長掌筋】
起始:上腕骨内側上顆
停止:手掌腱膜
【橈側手根屈筋】
起始:上腕骨内側上顆
停止:示指、中指の中手骨底掌側
【尺側手根屈筋】
起始:上腕頭;上腕骨内側上顆
   尺骨頭;肘頭内側面〜尺骨後縁近位2/3
停止:豆状骨→小指中手骨底掌側、有鉤骨鉤

長掌筋、橈側手根屈筋、尺側手根屈筋については、セルフ触察(自分の筋肉の触察)を行いました。
これら3筋は前腕掌側の最浅層にあり、触察しやすく、それぞれを鑑別しやすいです。
長掌筋の停止腱が屈筋支帯の上を通るのが特徴的です。

2014年11月15日

第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第22回

11月13日、第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第22回が開催されました。
今回は、腕橈骨筋、短橈側手根伸筋、長橈側手根伸筋、尺側手根伸筋、小指伸筋の5筋を触察実習しました。


【腕橈骨筋】
起始:上腕骨外側顆上稜近位2/3
停止:橈骨茎状突起基部

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腕橈骨筋は肘関節を屈曲する主要筋の1つ(他は上腕二頭筋、上腕筋)ですが、前腕回内−回外中間位でしか屈曲しません。ちなみに回内位では回外します。

腕橈骨筋の触察。橈骨遠位をホールドしなければなりません。手関節を越えてホールドすると長橈側手根伸筋が強く働いてしまうからです。
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【短橈側手根伸筋】
起始:上腕骨外側上顆
停止:中指中手骨底背側
【長橈側手根伸筋】
起始:上腕骨外側顆上稜
停止:示指中手骨底背側

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リスター結節とその橈側を走行する短橈側手根伸筋と長橈側手根伸筋の停止腱を触察しています。
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短橈側手根伸筋と長橈側手根伸筋の動きを指導しています。
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短橈側手根伸筋の触察
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長橈側手根伸筋の触察
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【尺側手根伸筋】
起始:上腕骨外側上顆、尺骨後面上部
停止:小指中手骨底背側
【小指伸筋】
起始:上腕骨外側上顆
停止:小指に向かう総指伸筋腱

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尺側手根伸筋と小指伸筋の触察はセルフ触察(自分の筋肉を触察)しました。
尺側手根伸筋は「伸筋」という名が付いているので背屈が主な働きと思うかもしれませんが、主な働きは尺屈です。

今回触察した筋肉は、橈側から腕橈骨筋、長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋、1筋(総指伸筋を)空けて小指伸筋、尺側手根伸筋の順に並んでいます。

2014年10月31日

第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第21回

10月30日、第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第21回が開催されました。
今回は、短趾屈筋、小趾外転筋、短小趾屈筋、母趾内転筋、そして上腕骨(遠位部)から手根骨までの骨指標を触察実習しました。


【短趾屈筋】
起始:踵骨隆起下面、足底腱膜
停止:第2〜5中節骨底

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短趾屈筋の触察。短趾屈筋は足底腱膜に密着するので、最初に足底腱膜を特定します。
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短趾屈筋の触察。上画像とは異なる方法で触察しています。短趾屈筋の働きを丁寧に追います。
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【小趾外転筋】
起始:踵骨隆起、足底腱膜、第5中足骨底
停止:小趾基節骨底(外側面)

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小趾外転筋の触察。小趾外転の動きを引き出すために、まず伸展・内転させます(他動的に)。
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【短小趾屈筋】
起始:第5中足骨底
停止:小趾基節骨底

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短小趾屈筋の触察。小趾外転筋と混同しないために、内方から外方に押すように触察します。
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【母趾内転筋】
起始:斜頭;内側楔状骨、第2・3中足骨
   横頭;第2〜5中足骨頭の関節包靭帯
停止:外側種子骨、母趾基節骨底

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母趾内転筋斜頭の触察
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母趾内転筋横頭の触察
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上腕骨(遠位部)から手根骨までの骨指標として、以下を触察しました。
外側上顆、橈骨頭、内側上顆、尺骨神経溝、上腕骨小頭、上腕骨滑車、尺骨茎状突起、橈骨茎状突起、豆状骨、三角骨、有鉤骨、有鉤骨鉤、月状骨、有頭骨、舟状骨、舟状骨結節、大菱形骨、小菱形骨

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2014年10月17日

第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第20回

10月16日、第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第20回が開催されました。
今回は長母趾屈筋、短趾伸筋、短母趾伸筋、母趾外転筋、短母趾屈筋の触察実習を行いました。


【長母趾屈筋】
起始:腓骨後面
停止:母趾末節骨底底面

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長母趾屈筋は下腿後面部深層筋群の1つです。
下腿後面部深層筋は3筋あり、中央に後脛骨筋、脛骨側(内側)に長趾屈筋、腓骨側(外側)に長母趾屈筋があります。
深さで言うと、最深層に後脛骨筋が位置し、その両側から長趾屈筋と長母趾屈筋が被さる(被さり方には個体差があります)ように走行します。
3筋は下腿から足根骨、指骨へと向かいますが、起始部から内果近くまでは3筋ともヒラメ筋に覆われています。

3筋は腱に移行した後、内果後方を通りますが、そこでの位置関係は、前方から後方へ後脛骨筋、長趾屈筋、長母趾屈筋の順に並んでいます。
長趾屈筋と長母趾屈筋の間には後脛骨動・静脈、脛骨神経が走行しています。
後脛骨動脈は(脈動によって)3筋を鑑別するための指標となります。

内果後方を通過した後、長趾屈筋は母趾外転筋、短趾屈筋(第1層の足底筋群)の下(深)層へと進入し、短趾屈筋の腱裂孔を通って第2〜5趾の末節骨底に停止します。
長母趾屈筋は内・外側結節の間(長母趾屈筋腱溝)を通り、載距突起を滑車にして向きを変え、長趾屈筋の下層を通った後、第1趾の末節骨底に停止します。
後脛骨筋は舟状骨粗面と内側楔状骨に付着し、そこから足底へ広がっていきます。

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【短趾伸筋】
起始:踵骨遠位外側面
停止:第2〜4長趾伸筋腱外側
【短母趾伸筋】
起始:踵骨遠位外側面
停止:母趾基節骨底背面

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足背にある内在筋は短趾伸筋と短母趾伸筋だけです。
短趾伸筋の筋腹は足根洞の外側、長趾伸筋腱と第5中足骨底の間あたりで、短母趾伸筋の筋腹は長趾伸筋腱と長母趾伸筋腱の間で確認できます。
筋腹を確認できれば、腱を追って、それぞれ停止部まで辿ることは容易です。


【母趾外転筋】
起始:踵骨隆起内側、舟状骨粗面
停止:内側種子骨→母趾基節骨底

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母趾外転筋は第1層の足底筋です。
第1層の足底筋は他に、短趾屈筋、小趾外転筋があります。
ただし第1層と言っても、その上層には足底腱膜が存在します。
また母趾外転筋は母趾球筋の1つでもあります。
他の母趾球筋には、短母趾屈筋、母趾内転筋があります。

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【短母趾屈筋】
起始:立方骨、外側楔状骨
停止:外側腹;外側種子骨→母趾基節骨底
   内側腹;内側種子骨→母趾基節骨底

短母趾屈筋の触察
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