2014年10月03日

第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第19回

10月2日、第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第19回が開催されました。
今回は膝窩筋、後脛骨筋、長趾屈筋の触察実習を行いました。


【膝窩筋】
起始:大腿骨外側上顆外側面、外側半月板
停止:脛骨後面上部(ヒラメ筋線より上部)

9-19-1.jpg

骨指標として外側上顆(膝窩筋の起始部)を触察
9-19-2.jpg

膝窩に手指を進入させます。腓腹筋外側頭の内側縁に沿うように。
骨部を感じ取れる深さまで進入した後、下腿内旋の動きを指示し、活動する膝窩筋を確認します。
9-19-3.jpg
9-19-4.jpg

膝窩筋の筋腹直上を走行する脛骨神経、膝窩動・静脈を確認9-19-5.jpg
9-19-6.jpg

大腿二頭筋の外側から手指を進入させ、膝窩筋の起始部に接近
9-19-7.jpg

膝窩筋の停止部を触察
9-19-9.jpg


【後脛骨筋】
起始:下腿骨間膜後面上半、脛骨・腓骨骨間膜側
停止:舟状骨粗面、内側楔状骨、他(中間・外側楔状骨、立方骨)

9-19-10.jpg

後脛骨筋を触察(舟状骨粗面を内果後方へ近づける動きを指示しながら)
9-19-11.jpg
9-19-12.jpg


【長趾屈筋】
起始:脛骨後面
停止:第2〜5趾末節骨底(短趾屈筋の腱裂孔を貫いて)

9-19-13.jpg

長趾屈筋を触察(第4、5趾を素早く他動伸展しながら)
* 第2、3趾は用いません。長母趾屈筋腱が第1趾だけでなく、かなり高い確率で第2、3趾に停止しているそうです。
9-19-14.jpg
9-19-15.jpg

2014年09月12日

第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第17回

9月11日、第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第17回が開催されました。
今回は大腿二頭筋、足根骨(下腿部から足部まで走行する筋群の骨指標として)、前脛骨筋、長趾伸筋、長母趾伸筋の触察実習を行いました。


【大腿二頭筋長頭】
起始:坐骨結節
停止:腓骨頭

【大腿二頭筋短頭】
起始:大腿骨粗線外側唇
停止:大腿二頭筋腱→腓骨頭

9-17-1.jpg

前回のトレーニングでは内側ハムストリングスである半腱様筋と半膜様筋の触察実習を、今回は外側ハムストリングスである大腿二頭筋を触察実習しました。

大腿二頭筋には長頭と短頭があります。
長頭は半腱様筋と、坐骨を頂点とした逆V字形を作り、両筋は半膜様筋の上層を走行します。
長頭、半腱様筋、半腱様筋は互いに連結しており、特に長頭と半腱様筋には広い範囲の筋連結があります。
ただし、体表から触察すると筋腹は明確に鑑別でき、この点は広筋群と同様です。

大腿二頭筋短頭はその大部分を長頭に覆われています。
また短頭は独自の停止腱を持っておらず、長頭の停止腱に横ざまに(半羽状様に)付着する形を取ります。
短頭の触察はその大部分を、上層を走行する長頭を介して行わなければなりません。
そのために股関節伸展位、および膝屈曲位という肢位から開始しました。
長頭が二関節筋(股関節と膝関節に関わる)、短頭が単関節筋(膝関節だけに関わる)であるということを利用したわけです。

9-17-3.jpg
9-17-2.jpg

長頭の触察は膝関節の屈曲ではなく、下腿部の外旋を使って行いました。
そうすることで、隣り合う半腱様筋(下腿部を内旋させる)との鑑別が可能となります(連結による「引き」はありますが、鑑別は可能です)。


大腿二頭筋を触察実習した後には、前脛骨筋、長趾伸筋、長母趾伸筋の実習前に、足根部の骨指標を確認しました。
講師のリードで次の順で確認していきました。
内果の位置、外果の位置、距腿関節の仕組みと動き、距骨頸と距骨頭、ショパール関節、載距突起、距骨下関節(内側部、外側部)の位置と動き、舟状骨粗面、内側楔状骨、中間楔状骨、外側楔状骨、リスフラン関節、第5中足骨粗面、立方骨。


【前脛骨筋】
起始:脛骨外側面、下腿骨間膜上部
停止:内側楔状骨、母指中足骨底足底面

【長趾伸筋】
起始:腓骨内側面、脛骨外側面上部
停止:第2〜5趾中節骨・末節骨

【長母趾伸筋】
起始:下腿骨間膜、腓骨骨間膜縁中央
停止:母趾基節骨(・末節骨)

9-17-5.jpg

最初に下腿の4つのコンパートメントについて説明しました。
それぞれのコンパートメントに、働きの近い筋群が含まれています。
前脛骨筋、長趾伸筋、長母趾伸筋は、前側部コンパートメントに含まれる筋群です。

9-17-4.jpg

前脛骨筋については、足部を背屈、内反(回外)させながら触察を行いました。
ただし、足部の背屈は隣接して走行する長趾伸筋、長母趾伸筋も持つ働きなので、これら2筋の働きを(相反)抑制するために、足趾を屈曲させた上で行いました。

長趾伸筋と長母趾伸筋については、2通りの方法で触察を行いました。
足趾(長趾伸筋では第2〜5趾、長母趾伸筋では母趾)の働きを使った方法と、それらの腱を他動的に牽引する方法の2通りです。

2014年09月07日

第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第16回

9月4日、第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第16回が開催されました。
今回は内側広筋、外側広筋、半腱様筋、半膜様筋の触察実習を行いました。
今回の内容は、ファシャワークなどの実践を意識したものとなりました。


【内側広筋上部】
起始:大腿骨粗線内側唇
停止:大腿四頭筋共同腱→膝蓋骨→脛骨粗面

【内側広筋下部(斜走部)】
起始:大内転筋腱→広筋内転筋腱板
停止:膝蓋骨内側縁

【外側広筋上部】
起始:大腿骨粗線外側唇、大転子下部
停止:大腿四頭筋共同腱→膝蓋骨→脛骨粗面

【外側広筋下部(斜走部)】
起始:腸脛靭帯
停止:膝蓋骨外側縁

9-15-3.jpg

9-16-1.jpg

内側広筋、外側広筋に対してファシャワークを行う場合、上部と下部とを別扱いにして(むしろ別の筋として)働きかけるとよいでしょう。
精確な仕事を行うためには、それが必須と言ってもよいかもしれません。
今回、触察実習を行う際にもそのことを意識して(受講生の皆さん全員が、ファシャワーカー養成トレーニングへ進級されるご希望ですので)、両筋とも上部と下部との筋間を正確に鑑別しました。

内側広筋は縫工筋の外側に位置します。
起始部では他の広筋(中間広筋、外側広筋)と合するために(合する範囲には個体差がありますが)、それらと鑑別するのが困難です。
大腿前側面で中間広筋を覆う部位に関しては、その外側縁を確認することで、その部位での中間広筋との位置関係が明確になります。

内側広筋は、上部と下部とで筋線維の走行方向(角度)がかなり異なります。
上部は大腿の長軸に近い(遠位部では長軸に対して角度がやや大きくなりますが)走行ですが、下部は長軸に対する角度が大きく、上部とは働きが異なることが予測できます。
下部は斜走部とも呼ばれますが、それは上記のような線維の角度によります。

外側広筋は大腿四頭筋の中で最大です。
起始部については、他の広筋と鑑別することが困難です。
大腿前側面で中間広筋を覆う部位に関しては、その内側縁を確認することで、その部位での中間広筋との位置関係が明確になります。
外側広筋の上を腸脛靭帯が走行していますが、そのことが触察の妨げとなったり、指標となったりします。

外側広筋も、内側広筋と同様に上部と下部(こちらも斜走部と呼ばれます)に分かれますが、両部の筋線維の走行方向は内側広筋ほどの差はありません。
ただし、起始部近くの走行方向から予測される下部の働きは、やはり上部のそれとは異なると言えるでしょう。

ファシャワークを行う際、内側広筋と外側広筋の斜走部が膝蓋骨をV字で挟む形のこのエリアでは、様々な働きかけが可能です。
内側広筋下部は広筋内転筋腱板に起始しますので、大内転筋とは直接的な繋がりがあります。
大内転筋の前側面は他の内転筋群の、後側面ではハムストリングスの「床」となっており、かつそれらと部分的に連結しています。
外側広筋下部は腸脛靭帯の裏面に起始しますが、大腿筋膜張筋と大臀筋浅部はその腸脛靭帯に付着しています。
また腸脛靭帯は大腿筋膜の肥厚部(一部)ですので、大腿全体の構造に直接的に関わっています。
このV字エリアに働きかけることで、両下肢、骨盤帯に対しては直接的、及び即時的に変化を起こせます(その上部構造に対しても同様ですが)。

上記V字形エリアに関するご質問を、受講生さんからいただいたことをきっかけに、「番外」のデモを行いました。
外側広筋下部筋膜に対して働きかけることで、反対側の内転筋群、足の踏み込み(反対側)、重心の位置を変えましたが、施術時間は1分くらいだったと思います。
外側広筋下部の張力(緊張度)をファシャワークによって調整したのですが、デモのモデルになってくださったSさんは、施術中、反対側の内転筋群に起こった変化を感じられたようです。


【半腱様筋】
起始:坐骨結節
停止:脛骨粗面内側

【半膜様筋】
起始:坐骨結節
停止:脛骨内側顆内側部〜後部

9-16-2.jpg

ハムストリングスには、下腿部の内側へ向かって走行する半腱様筋と半膜様筋、外側へ向かって走行する大腿二頭筋があります。

半腱様筋と大腿二頭筋長頭は坐骨結節の近接する部位に起始し、同じ深さを走行します。
これら2筋は最終的に下腿部の内外へ別れますが、かなり広い範囲で筋連結があります。
ただし連結は深部で起こっているので、並走部の筋間を触察することは可能です。

大腿二頭筋短頭の起始部は大転筋深部のすぐ尾方です。
また停止部は、長頭腱に対して半羽状の形状で付着し、独自の腱を持っていません。

半膜様筋は半腱様筋と大腿二頭筋長頭の下層を走行します。
この筋は、半腱様筋と大腿二頭筋に隠れた部位の多くが腱膜様になっています。

今回は半腱様筋と半膜様筋の2筋を触察実習しました。
半腱様筋については、停止腱の走行に合わせて膝の屈曲角度を決めることで、触察を容易にする方法をお伝えしました。
半膜様筋については、膝関節内側を開く操作によって活動を強化した上で、上層を走行する半腱様筋と大腿二頭筋長頭から鑑別しました。

ところで、「番外デモ」をもう1つ行いました。
ハムストリングスの触察デモを行った際に、「目が見開いた」「視界が広がった」という感想をいただきました。
触察実習では、必ずと言ってよいほど、何らかの身体変化が起こります(それを狙っているわけではありません)。
今回の変化は体液循環によるものと判断し、それを強化するために体液系(血液、リンパ液、細胞間質液)に対する働きかけを鼠径部周辺に対して行いました(まったくの番外です(笑))。
10秒くらいの施術だったでしょうか、効果(より目が開く感じ)を実感していただけたようです。
まあ、ボディワークの守備範囲はなかなか広いということで。

2014年08月22日

第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第15回

8月21日、第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第15回が開催されました。
今回は縫工筋、大腿直筋、中間広筋の触察実習を行いました。

今回で前半が終了しました。
これまで触察実習した筋肉は50筋です。
前期までと比較して遅いペースですが、新しい情報も入っていますし、より充実した内容となっています。


【縫工筋】
(起始)上前腸骨棘
(停止)脛骨粗面内側

9-15-1.jpg

最初に縫工筋を簡単に触れる方法をお伝えしました。
この筋は表層にあるので、難なく触れることができます。

次に骨指標として上前腸骨棘、膝関節、脛骨粗面内側を確認しました。
また、脛骨粗面内側に付着する半腱様筋、薄筋、縫工筋の腱(鵞足)を、どれと特定せずに触察しました。

最後に縫工筋の働きを、2通りのムーブメントを用いて調べました。
また、鵞足を改めて詳しく触察しました。


【大腿直筋】
(起始)下前腸骨棘、股関節包
(停止)大腿四頭筋共同腱→膝蓋骨→脛骨粗面

【中間広筋】
(起始)大腿骨前面近位2/3
(停止)膝蓋骨→脛骨粗面

9-15-3.jpg

最初に膝蓋上包を触察しました。
膝蓋上包は中間広筋の深層にあるのですが、膝関節伸展位で膝蓋骨の頭側を軽く押圧することで感覚することができます。

9-15-2.jpg

また、膝蓋上包を触察すると必然的に触れることになる膝関節筋(疎らな線維で出来ています)について説明しました。

次に大腿四頭筋の骨指標として膝蓋骨、脛骨粗面、大腿骨を、大腿直筋の骨指標として下前腸骨棘を触察しました。

膝蓋骨は意外と小さいです。
一般に膝と呼ばれる突出部の2/3くらいの大きさです。

下前腸骨棘を股関節屈曲/伸展―中間位で触れるのは難しいかもしれません。
もし難しければ、股関節屈曲位(他動屈曲)にして上層にある軟部組織を弛めれば、容易に触察することができます。

大腿直筋の触察は、背臥位で膝裏を軽く(広筋群も働きますので)テーブルに押しつける動きか、膝を持ち上げる(広筋群を抑制できます)動きで働かせながら触察しました。

最後に中間広筋の触察を行いました。
筋腹の幅を大腿直筋と比較しながら行いました。
中間広筋と大腿直筋とでは、中間広筋のほうが幅広です。
ところが、多くの解剖学書で使われる中間広筋の図が、内側広筋の前外側縁と外側広筋の前内側縁によって両側縁を覆われたものであるため、大腿直筋のほうが幅広であると思われがちです。

2014年08月16日

第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第14回

8月14日、第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第14回が開催されました。
今回は、各脊椎(頸椎、胸椎、腰椎)棘突起と脊柱起立筋群(腸肋筋、最長筋、棘筋)の触察実習を行いまいした。


頸椎棘突起の触察は被触察者座位で行いました。
外後頭隆起を捉えた後、手指を軽く圧しながら、頸部上を尾方に滑らせていくと、指腹に3つの目だった突起が当たります。
それらの突起は、第2頸椎(軸椎)、第6頸椎、第7頸椎の棘突起です。

第2頸椎棘突起のすぐ頭方に小さな窪みがあって、その底に第1頸椎後結節(棘突起が退化したもの)があります。
被触察者の頸部を他動的に少し伸展させると、触察しやいです。

第2頸椎棘突起から第6頸椎棘突起の間を、少し強めの圧で(つまり少し深めに)たどると、第3〜5頸椎棘突起が容易に触察できます。

第7頸椎棘突起が、第1胸椎棘突起と鑑別しにくいときがあります。
そんな場合には、頸椎を屈曲すると第7頸椎棘突起が目立って突出します。
それでも鑑別しにくければ、頸椎を屈曲位のまま回旋すると(伸展位では環軸関節の動きになってしまいます)、第1胸椎棘突起よりも第7頸椎棘突起のほうが回旋に連れて大きく動きます。
ちなみに、背臥位で調べるためには、第7頸椎棘突起、第1胸椎棘突起と思われるあたりに手指を当て、胸骨を軽く圧します。
すると、第1胸椎棘突起が指腹を押してきます。


胸椎棘突起と腰椎棘突起の触察は被触察者腹臥位で行いました。
両腕は体幹に沿わせます。
肩峰より少し頭方の高さに第1胸椎棘突起、肩甲骨上角の高さに第2胸椎棘突起、棘三角(基部)の高さに第3胸椎棘突起、下角の高さに第7胸椎棘突起、肩甲帯レベル(下角)と骨盤帯レベル(腸骨稜、ヤコビー線)の中央に第12胸椎棘突起、腸骨稜の高さ(ヤコビー線)に第4腰椎棘突起があります。
以上を確認した後、それらを指標として他の棘突起を探しました。

9-14-1.jpg


腸肋筋、最長筋、棘筋の触察は被触察者腹臥位で行いました。

9-14-2.jpg

【腰腸肋筋】
(起始)胸腰筋膜、仙骨後面
(停止)第6(7)〜12肋骨
【胸腸肋筋】
(起始)第7〜12肋骨角
(停止)第1〜6肋骨角、第7頸椎横突起
【頸腸肋筋】
(起始)第3〜6肋骨角
(停止)第4〜6頸椎横突起

腰背部で胸腰筋膜に包まれた脊柱起立筋群の束を捉えて、その束が胸郭上では肋骨角上からその内側に乗るように走行しているのを確認しました。
またその束が、広背筋とどういう位置関係かを調べました。

腸肋筋は脊柱起立筋群の最外側を走行します。
胸郭下半で肋骨角上を軽く押圧しながら手指を内外に動かすと、指腹に小さなコード上の膨らみを感じとれます。
体幹を軽く伸展すると、その膨らみが硬くなり、少し盛り上がる様子を感じとれます。
その膨らみを上に頭方と尾方にたどります。
頭方では肩甲骨内側縁に沿って(腹臥位なので、肩甲骨は外転位)走行し、尾方では胸郭上を過ぎると、しだいに内側を走行する筋(最長筋)と鑑別ができなくなります。


【胸最長筋】
(起始)腰椎肋骨突起後面全長、胸腰筋膜
(停止)全胸椎横突起
【頸最長筋】
(起始)第1〜4(5)胸椎横突起
(停止)第2〜6頸椎横突起
【頭最長筋】
(起始)第1〜4(5)胸椎横突起、第(4)5〜7頸椎関節突起
(停止)乳様突起

腸肋筋の内側で、脊柱起立筋群の最も高い部位を走行するのが最長筋です。
最長筋は、脊柱起立筋群の中で最も大きいです。
体幹を軽く伸展すると(伸展しすぎると、腸肋筋との鑑別ができません)、かなり大きく膨らみます。
腰背部では腸肋筋と合していて(共同腱となっています)鑑別が困難ですが、胸郭上では境界が分かりやすいです。

最長筋は細かく触察すると、2、3のグループに鑑別することができます。
デモンストレーションでは、3グループに感じとれる部位を、受講生に皆さんにも触れていただきました。
触察実習の際にも、同様に細かく鑑別していただきました。


【胸棘筋】
(起始)第11胸椎〜第2腰椎棘突起
(停止)第1〜第4胸椎
【頸棘筋】
(起始)第(6)7頸椎・第1、2胸椎棘突起
(停止)第2頸椎棘突起

棘筋の触察実習では、横突棘筋群である多裂筋や回旋筋との鑑別を行いました。
手指を棘突起のすぐ外側に当て、脊柱を同側に回旋すると棘筋が、反対側に回旋すると多裂筋などが働きます。

2014年08月09日

第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第13回

8月7日、第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第13回が開催されました。
今回は長内転筋、恥骨筋、薄筋、短内転筋、大内転筋の5筋を触察実習しました。

9-13-1.jpg


【長内転筋】
(起始)恥骨結節下方
(停止)大腿骨粗線内側唇の中1/3
(作用)股関節内転、屈曲、伸展、内旋、外旋

解剖学書などで内転筋群の図を見ると、ほとんどが大腿内側面のものです。
内転筋群が大腿内側にあるので、そうならざるを得ないでしょうが、この面から見ると長内転筋は内側縁が見えるだけなので、薄筋よりも細い筋肉だと思われがちです。
それに対して薄筋は、幅のある面を見せることになるので、太い筋肉に見えるのです。
ところが実際には、長内転筋のほうが幅広く大きな筋肉です(長さは薄筋のほうがありますが)。

今期は内転筋群の触察実習を、大半は被触察者が背臥位で行いました(大内転筋だけは腹臥位でも行いました)。
被触察者は背臥位で膝を曲げ(股関節・膝関節屈曲位)、股関節外転・外旋位で、触察者はその膝をホールドします。
大腿内側面近位でもっとも突出した部位(その部位に長内転筋があります)に触察手を置き、被触察者に膝を立てる(内転する)よう指示します。
突出した部位が硬くなり、長内転筋を確認できます。
今回は長内転筋を、内側広筋の下層に向かう部位まで触察しました。

長内転筋は股関節を内転させる他に屈曲および伸展させることもできます(その他に外旋・内旋も)。
ところがこの筋を45〜90度で屈曲位にすると、その中で屈曲でも伸展でも反応しない角度があります(個人差があります)。
その角度を探して、そこでは内転でしか反応しないことを確認しました。
これは面白かったのではないかと思います。

【恥骨筋】
(起始)恥骨櫛
(停止)大腿骨上部
(作用)股関節内転、屈曲、内旋、外旋

前述の「もっとも突出した部位」は長内転筋の内側縁でしたが、その部位を頂上にして「なだらかな山」になっています。
山頂の前側斜面には恥骨筋が、後側斜面には薄筋が走行しています。
薄筋と長内転筋との境界は鑑別しやすいのですが、恥骨筋と長内転筋との境界は難しい場合があります(個人差があります)。
その場合には大腿動脈をまず捉え、その内側で恥骨筋に触れて、恥骨筋の側から軽く押圧しつつ長内転筋に接近すると、それらの境界が分かりやすいと思います。

【薄筋】
(起始)恥骨結合外側
(停止)脛骨粗面内側
(作用)股関節内転、屈曲、膝関節屈曲、内旋

薄筋は長内転筋の後側を走行した後、脛骨粗面内側(鵞足)まで達します。
内転筋群の中ではこの薄筋だけが2つの関節をまたぎます(二関節筋。他は単関節筋)。
薄筋は大腿の内側表面を走行するので、容易に触察できます。

この筋に対しては、2つの方法で触察実習しました。
1つは股関節を内転させながらの触察、もう1つは股関節を外転位に(つまりストレッチ)させながらの触察です。

【短内転筋】
(起始)恥骨下枝外側
(停止)大腿骨小転子から粗線まで、粗線内側唇の上1/3
(作用)股関節内転、屈曲、内旋、外旋

短内転筋は内側縁と前面を触察しました。
内側縁の触察は、長内転筋と薄筋の間に手指を進入させて行いました。
この進入口(ポケット)を使う場合には、長内転筋に沿うように手指を進入させなければなりません。
短内転筋は長内転筋と重なるように走行するので、角度を間違えると、短内転筋にかすりもしません。

前面の触察は、長内転筋の前側、恥骨筋のすぐ遠位で行いました。
長内転筋と薄筋の間で触察するようには、深く手指を進入させる必要はなく、浅い位置で触れることができます。

【大内転筋筋性部】
(起始)恥骨下枝
(停止)大腿骨粗線内側唇
(作用)股関節内転、屈曲、内旋
【大内転筋腱性部】
(起始)坐骨枝、坐骨結節
(停止)内側上顆上方
(作用)股関節内転、伸展、外旋

大内転筋の触察は、長内転筋と薄筋の間から手指を進入させて行う方法、腱性部を内側上顆上方の内転筋結節から坐骨結節までたどる方法、ハムストリングスの外側で捉える方法、ハムストリングスの内側で捉える方法、の4つの方法で行いました。

長内転筋と薄筋の間から手指を進入させる方法では、前述の短内転筋を触察するための同じ進入口を使いますが、経路が違います。
短内転筋の場合と違って、長内転筋に沿わず、後方へ離れていくような角度で手指を進入させます。

腱性部の触察は、股関節を外転・屈曲させて行います。
腱性部の働きは股関節の内転・伸展ですので、その反対方向へ動かすことでストレッチし、硬く張った状態を作っての触察です。

ハムストリングスの外・内側で捉える場合には、被触察者は腹臥位です。
ハムストリングスの外側での触察は、大臀筋の下内側で行います。
大臀筋の下層に手指を進入させて行えば、停止部に接近することができます。
ハムストリングスの内側での触察は、そこに手指を置けば、浅い位置で触れることができます。


今回の触察実習は難しかったかもしれません。
今回の対象である内転筋群は特に、手指を進入させる角度や押圧の仕方を間違えると、隣り合う筋同士を鑑別することができないからです。

最後に、個々の内転筋を正確に触察できると、何ができるかをデモでお見せしました。
2名の受講生さんにデモ・モデルになっていただき、今回触察実習した手順で個々の内転筋のエッジをなぞりました。
特に緊張がある筋に対しては、軽くストレッチしつつ行いました。
1分にも満たない時間ですが、その結果、脊柱の可動域が明らかに広がりました。
これは誰が行っても同様の結果になります。

これまで触察実習した筋の中では、腰方形筋や斜角筋なども、単に触察するだけで(ただし正確にエッジをたどれなければなりませんが)同様の結果が得られることをお伝えしました。

2014年07月26日

第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第12回

7月24日、第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第12回が開催されました。
今回は大臀筋、中臀筋、大腿筋膜張筋の3筋を触察実習しました。


【大臀筋浅部】
(起始)腸骨稜、上後腸骨棘、腰背腱膜、仙骨、尾骨
(停止)腸脛靭帯
【大臀筋深部】
(起始)腸骨外側面、仙結節靭帯
(停止)大腿骨臀筋粗面
8-6-2.jpg

大臀筋には伸展、外旋、外転、内転の働きがあります。
この筋は構造(形状)的には浅部と深部とに分かれますが、機能(作用)的には上部と下部とに分かれます。
上部には伸展、外旋の他に外転の働きが、下部には内転の働きがあります。

大臀筋には上記の働きの他に、安定筋としての働きがあります。
すなわち体幹部、骨盤部、下肢部において、矢状面での動きを安定させます。
歩行の際には上体の安定を保つ働きがあり、特に踵接地の際に慣性力によって股関節や体幹が屈曲するのを防ぎます。
浅部は、腰背腱膜を介して脊柱起立筋群や広背筋などに影響を与えます。
腰背腱膜(腱膜群と言ったほうが本当は正しいでしょう)を下方から牽引して「張り」を作ることで、この腱膜と関わる(に付着する)筋群の働きを助けます。
腸脛靭帯を介して(大腿筋膜張筋と協力して)膝関節にも影響を与えます。

この筋の触察実習では、股関節伸展の働きで大臀筋全体の活動を、外転で上部、内転で下部の活動を触察しました。
伸展の働きを使っての触察では、大臀筋だけでなくハムストリングスも強く働きます。
腹臥位で脚を伸ばした状態からの伸展ですから、ハムストリングスの起始部である坐骨結節は大臀筋の下縁部に覆われている状態(ちなみに座位では、坐骨結節は大臀筋に覆われていません)で、両筋の境界を鑑別することが難しくなります。
そこで膝関節を屈曲位にし、つまりハムストリングスを少し弛ませた状態を作った上で股関節伸展を誘導します。

上部と下部との鑑別は、股関節の外転・内転を繰り返し誘導することで、両者の境界を発見する方法を取りました。
境界が明確でない場合には、明確にするテクニック(ファシャワークの方法)を簡単に行ってから、再度挑戦していただきました。


【中臀筋】
(起始)腸骨外側面
(停止)大転子外側面
8-6-21.jpg

中臀筋は前部(前方線維)と後部(後方線維)とに分かれます。
前部には外転、屈曲、内旋の働きが、後部には外転、伸展、外旋の働きがあります。
ペアで触察を行う前に、歩行をしながら自分の筋を触察していただきました。
この筋は歩行時、股関節がどの方向に動いても、休まずに働きます。
動く方向によって働く線維が違うので、様々に形状を変えていきます。
細かく注意を向けて触察すると、足を前に出す時、前部が屈曲で、後部が外転で働きます。
後部が外転で働くのは、足を前に出す時に、骨盤の同側も前に出るので、大腿部は骨盤に対しては屈曲だけでなく外転するからです。
足を後ろに残す時、前部が内旋で、後部が伸展で働きます。

ペアでの触察では、股関節外転でこの筋全体の活動を、内旋で前部の、外旋で後部の活動を触察しました。
前部と後部との境界は、内旋と外旋を繰り返し誘導することで鑑別しました。
両者を鑑別すると、後部より前部のほうが大きいのが分かります。


【大腿筋膜張筋】
(起始)上前腸骨棘
(停止)腸脛靭帯を介して脛骨粗面外側(ガーディ結節)
8-6-13.jpg

大腿筋膜張筋には、股関節屈曲、外転、内旋の働きがあります。
この筋は中臀筋の前縁に接しますが、中臀筋のように腸骨外側面上を走行しているのではなく、上前腸骨棘に起始した後は、腸骨の前外方を走行します(ちなみに、同じ上前腸骨棘に起始する縫工筋は、そこから前内方を走行します)。
大腿筋膜張筋は、その後すぐに腸脛靭帯に付着しますが、この腸脛靭帯は大腿筋膜と独立していません。
腸脛靭帯は大腿筋膜の肥厚部であると考えたほうがよいでしょう。
そう考えると、大腿筋膜張筋は股関節を、および腸脛靭帯を通して膝関節を動かしますが、それだけではなく大腿筋膜に「張り」を作り(名のとおりです)、それと連続する下腿筋膜にも影響を与えます。

大腿筋膜張筋の触察では、骨指標として上前腸骨棘、脛骨のガーディ結節を調べた後、この筋と腸骨との位置関係を知るために、腸骨の前先端部(上前腸骨棘、下前腸骨棘がある部位)を確認し、その部位に対してこの筋がどう走行しているかを探りました。
また中臀筋との鑑別も行いました。


今回は3筋の触察実習を行うに当たって、(1)効率的に触察するためのホールディング、(2)タッチの方法、(3)目標とする筋に拘縮や癒着があった場合にそれらを一時的に解消した上で触察する技術、などをお伝えしました。

2014年07月20日

第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第11回

7月17日、第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第11回が開催されました。
今回は梨状筋、内閉鎖筋、上双子筋、下双子筋、大腿方形筋の5筋を触察実習しました。
予定では大臀筋、中臀筋、大腿筋膜張筋に引き続き上記の筋群を触察実習する予定でしたが、そうすると深層筋群の途中で時間切れ(第9期は夜間のトレーニングなので、1回3時間です)となってしまう可能性があったので、あえて順番を変えて行いました。
深層筋群については、全て関係づけて同じ回に行いたかったので、そうしました。
その結果、表層筋群の触察実習は次回に持ち越すことになりました。

今回はオープンパス1期生の高橋さんと4期生の生田さんが参加してくださいました。
第4期まではパルペーション・トレーニングとファシャワーカー養成トレーニングが分割されておらず、触察に関しては現在のように細かいところまではお伝えしていませんでした。
それなので触察に関しては、高橋さんと生田さんのお二人は9期生の皆さんとあまり変わらない立場です。
それにも関わらす、やはり実践経験が「物を言う」という感じで、お二人の技術力には驚かされました。
かつお二人とも優れた武術家(意拳、小野派一刀流)なので、そうしたことも関係あるのかと思いました。
触察時の重心移動、手技の用い方、力の抜き方(私が注目する若手ボディワーカーさんが「抜力」という言葉を使っています。この言葉が例えば「脱力」より、お二人にはピッタリきます)など、構えからの技運びが図抜けていました。

【梨状筋】
(起始)仙骨前面
(停止)大転子尖端後縁
【内閉鎖筋】
(起始)骨盤内面の閉鎖孔周囲
(停止)大転子転子窩
【上双子筋】
(起始)坐骨棘
(停止)大転子転子窩
【下双子筋】
(起始)坐骨結節上部
(停止)大転子転子窩
【大腿方形筋】
(起始)坐骨結節外面
(停止)大転子後面下部の転子間稜
9-11-1.jpg

マックス君の臀部
9-11-2.jpg

今回は梨状筋、内閉鎖筋、上双子筋、下双子筋、大腿方形筋の5筋を触察実習しましたが、これらに外閉鎖筋を加えた6筋で「臀部深層外旋6筋」と呼ばれます。
外閉鎖筋の触察は、しばらくお伝えしていません。
第2期でこの筋に対する施術法をお伝えした際に、その準備として行ったのが最後だったと思います。
内転筋群の下層にあるので、手技を到達させるのが少し難しく、被触察者が股関節屈曲位で長内転筋後側のポケットから進入させる方法が比較的容易ではないでしょうか。
外閉鎖筋の触察に関しては、後ほど(このトレーニング中に、もしくはインテグレーティブワーカー養成トレーニングの中で施術の準備として)行うかもしれません。

臀部深層外旋6筋は、靭帯群と協力して大腿骨頭を支持し、股関節の動きを安定させます。
上腕骨頭、腱関節に対する肩部回旋筋腱板と同様の働きです。
今回は5筋の触察実習でしたが、これらの位置、作用を関係づけながら行いたかったので、5筋連続での触察となりました。
最初に指標として上後腸骨棘、下後腸骨棘、仙骨外縁、坐骨結節、仙結節靭帯、大転子、転子間稜(大転子から小転子まで触察しました)、転子窩を確認し、その後に梨状筋の上縁、梨状筋の下縁、大腿方形筋の下縁、大腿方形筋の上縁、内閉鎖筋、上双子筋、下双子筋の順で触察しました。
どの筋に対しても外旋させながらの触察となりましたが、働きを増幅させるために内転位または外転位からの外旋となりました。

最後にご質問にお答えする形で、梨状筋と内閉鎖筋の簡単な位置把握法をお伝えしました。
また梨状筋症候群についてお話ししました。

2014年07月12日

第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第10回

7月10日、第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第10回が開催されました。
今回は横隔膜、腰方形筋、大腰筋、腸骨筋の4筋を触察実習しました。
触察した筋の数が予定の半分でしたが、その分濃い内容となりました(と思います)。


【横隔膜】
起始:第7〜12肋骨内側面、胸骨剣状突起、第1〜3胸椎前側面
停止:腱中心
9-10-1.jpg

横隔膜は体幹を胸腔と腹腔とに隔てる筋です。
胸腔は骨格に覆われていますので、横隔膜を触察しようとすれば腹腔から進入するしかありません。
ところが腹腔から進入するにしても、横隔膜の際まで内臓が迫っています。
中でも肝臓などは横隔膜の下面に付着している上、実質のある臓器です。
この臓器を介して、つまり間接的に触察することで横隔膜の質感(触感)を得るというのは至難の業です。

肝臓がある横隔膜右側下面の触察では、肝臓を介して横隔膜の動きを(質感ではなく)触察しました。
この臓器は横隔膜に付着しており、しかも実質のある臓器ですので、その動きは横隔膜の動きを直接に反映しています。

横隔膜の中央前下面から左側下面にかけての部位に対しては、胃を介しての触察を試みました。
胃は中空の臓器ですので、手技圧によって(内容物があるかないかによっても)大きく変形します。
この臓器は横隔膜の動きだけを伝えてはくれません(強く圧すれば話は別ですが)。
それと重ねて、その動きによって腹腔全体に起こる波の動きを伝えてきます(もちろん、腹腔内ですから大動脈や心臓の拍動などは伝えてきますが、それは肝臓も同様です)。

内臓を介した触察の後には、直接に横隔膜に触れました。
胸腔側に肋骨横隔洞がありますが、横隔膜を介してその反対側の部位です。
肝臓と肋骨弓の間に手指を進入させて行いました。
指腹(または指背)で肝臓の動きを、指尖で横隔膜の動きを触察しました。

ちなみに、内臓操作を行う際には個々の臓器のモティリティを感得しながら行いますが、今回は横隔膜の触察が目的ですので、大まかな動きだけを追って終わりました。


【腰方形筋】
起始:腸骨稜後面
停止:第12肋骨下縁、第12胸椎横突起、第1〜4腰椎肋骨突起
9-10-2.jpg

腰方形筋は腹部最後部にある筋です。
腹部と背部の間と言ってもよいかもしれません。
そのようなロケーションであるため、被触察者が腹臥位でも、背臥位でも、側臥位でも容易に触察することができます。

今回は側臥位での触察となりました。
最初に骨指標として腸骨稜、第12肋骨、腰椎肋骨突起を触察しました。
腸骨稜に対しては、腰方形筋の起始部は後面ですが、この部位に関わる、前回まで触察実習してきた筋(広背筋、外・内腹斜筋、腹横筋など)を思い出しながら全長を辿りました。

第12肋骨の触察はそう難しくなかったようですが、腰椎肋骨突起に関しては、どの受講生さんも苦労されているようでした。
しかしこれも慣れで、側臥位(それがどんなに崩れていようと)での体幹に対する腰椎のロケーションが把握できるようになれば容易です。

その後は、筋の外形を辿ったり、前後から挟み込んだりしました。
深部筋ですので、他の筋を介して触察しなければなりませんが、なるべく少ない筋を介するように努めます。
この場合、オープンパス・メソッド(R)で言う「ポケット」の考え方、そしてそれを見つける知識(解剖学)と技術が役に立ちます。


【大腰筋】
起始:(浅頭)第12胸椎〜第5腰椎(椎間板を含む)、(深頭)全腰椎肋骨突起
停止:大腿骨小転子
【腸骨筋】
起始:腸骨内側面の腸骨窩
停止:大腿骨小転子
9-10-3.jpg

大腰筋と腸骨筋は腸腰筋という1つの筋として触察しました。

最初に以下のような話をしました。
この筋の作用については、解剖学(関連)書によって記述が異なります。
股関節の屈曲、外旋まではどの書籍でも同じですが、もう1つの作用を挙げている書籍が多く、その作用に関して食い違っているのです。
その作用とは、外転/内転なのですが、私の所持するすべての関連書籍で、これらが3:2くらいの割合になっています。

腰椎、腸骨、小転子、股関節の位置関係から考えて、腸腰筋の働きによって股関節が屈曲および外旋すれば、膝が外方へ動きます。
その動きの外観を見れば、外転と捉えて間違いないと思いがちですが、大腿骨の内後面(小転子のある面)が体幹の左右中心である腰椎に向かって動いているのですから、動きの性質から判断すると内転と捉えることが正しいとも言えるわけです。

腸腰筋に関しては、全長を触察しました。
指標として、腰椎の前側面から外側面、腰仙移行部(岬角)から仙骨前面、腹大動脈、鼠径靭帯を触察した後、起始部から停止部まで全長に渡って触察しました(デモンストレーションでは余興的に仙骨前面で梨状筋を触察しましたが、今回それがいちばんウケました(笑))。
大腰筋起始部、大腰筋上部外側縁、大腰筋下部内側縁、大腰筋と腸骨筋が合する部位、腸骨筋、股関節(大腿動脈)近傍の腸腰筋(大腰筋、腸骨筋)、腸腰筋(大腰筋、腸骨筋)停止部(小転子)の順で行いました。

停止部である小転子の位置ですが、下の画像(骨格模型)を見ていただくと立位では内後面にありますが、股関節屈曲・外旋・外転(内転)の際にはほぼ前面にあります。
長内転筋の後側から手指を進入させれば、容易に小転子に到達します。
9-10-4.jpg9-10-5.jpg9-10-6.jpg



2014年06月27日

第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第9回

6月26日、第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第9回が開催されました。
今回は腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋の4筋を触察実習しました。

腹直筋の触察は、白線、腱画の触察を含めて、全長に対して行いました。
その中で、胸郭上(第5〜7肋軟骨上の停止部)での触察が、受講生の皆さんにとって最も難しかったようです。

腹直筋の働きを追って胸郭上で手指を移動させると、鎖骨の辺りまで動きが感じられます。
しかしこの筋は、胸郭上では第5〜7肋軟骨に停止するので(例外はありますが)、鎖骨の辺りには存在しません。
ところが腹直筋を働かせると、確かに胸郭上部でも動きを感じることができます。
試しに触察する範囲を広げてみると、胸郭上を越えて烏口突起や三角筋の辺りまで動きを感じます。

これは腹直筋の動きが周囲の筋膜を牽引するために起こる現象なのです。
腹直筋がどこで終わるのかを触知するためには、筋腹と周囲の筋膜との動きを鑑別できなければなりません。
筋腹の動きは身体から弾力を持って浮き上がるのに対して、周囲の筋膜の動きは横滑りするように感じられます。
その動きの違いが分かれば、両者を鑑別でき、この筋の付着部を正確に捉えることが可能となります。
そうして触察すると、この筋の停止部の形状には(他の筋もそうでしょうが)かなりの個体差があることに気づきます。

外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋については、最初にこれら3筋を鑑別し、その重なり具合を感じ取る練習をしました。
3筋を正確に鑑別できると、これらが癒着していたり、拘縮があったり、動きが鈍くなっていたりした場合に、その部位や状態を確実に捉えること可能となります。

3筋の重なり具合を感じ取る練習をした後は、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋の順で個々に触察しました。
外腹斜筋、内腹斜筋の場合には全長に渡って触察し、腹横筋は2点触察法という、2点に触れることで全体の形状(歪みや拘縮などを含めて)を把握するテクニックをお伝えしました。

外腹斜筋については、停止部近くで筋腹から腱膜に移行する部分、前鋸筋や広背筋と噛み合った後の停止部までの走行などを細かく触察しました。
内腹斜筋については腰背筋膜に付着する部位を強調しました。

腹横筋については、触察を行うよりも、被触察者がこの筋を働かせるほうが難しかったようです。
この筋を単独に働かせる(「完全に単独」というのは困難でしょう)ためには、触察者の高い誘導技術が必要です。
このことについては、ご質問に応じて(ペアを作って実習しましたが、各ペアによって興味が異なり、質問が異なっていましたので)デモを行いました。


【お知らせ】7月13日にパルペーション公開セッション、7月26日にパルペーション・ワンデイ・ワークショップ(初級)、8月9日にパルペーション・ワンデイ・ワークショップ(上級)を開催します。・・・詳しい内容