9月4日、第9期オープンパス認定パルペーション・トレーニング第16回が開催されました。
今回は内側広筋、外側広筋、半腱様筋、半膜様筋の触察実習を行いました。
今回の内容は、ファシャワークなどの実践を意識したものとなりました。
【内側広筋上部】
起始:大腿骨粗線内側唇
停止:大腿四頭筋共同腱→膝蓋骨→脛骨粗面
【内側広筋下部(斜走部)】
起始:大内転筋腱→広筋内転筋腱板
停止:膝蓋骨内側縁
【外側広筋上部】
起始:大腿骨粗線外側唇、大転子下部
停止:大腿四頭筋共同腱→膝蓋骨→脛骨粗面
【外側広筋下部(斜走部)】
起始:腸脛靭帯
停止:膝蓋骨外側縁


内側広筋、外側広筋に対してファシャワークを行う場合、上部と下部とを別扱いにして(むしろ別の筋として)働きかけるとよいでしょう。
精確な仕事を行うためには、それが必須と言ってもよいかもしれません。
今回、触察実習を行う際にもそのことを意識して(受講生の皆さん全員が、
ファシャワーカー養成トレーニングへ進級されるご希望ですので)、両筋とも上部と下部との筋間を正確に鑑別しました。
内側広筋は縫工筋の外側に位置します。
起始部では他の広筋(中間広筋、外側広筋)と合するために(合する範囲には個体差がありますが)、それらと鑑別するのが困難です。
大腿前側面で中間広筋を覆う部位に関しては、その外側縁を確認することで、その部位での中間広筋との位置関係が明確になります。
内側広筋は、上部と下部とで筋線維の走行方向(角度)がかなり異なります。
上部は大腿の長軸に近い(遠位部では長軸に対して角度がやや大きくなりますが)走行ですが、下部は長軸に対する角度が大きく、上部とは働きが異なることが予測できます。
下部は斜走部とも呼ばれますが、それは上記のような線維の角度によります。
外側広筋は大腿四頭筋の中で最大です。
起始部については、他の広筋と鑑別することが困難です。
大腿前側面で中間広筋を覆う部位に関しては、その内側縁を確認することで、その部位での中間広筋との位置関係が明確になります。
外側広筋の上を腸脛靭帯が走行していますが、そのことが触察の妨げとなったり、指標となったりします。
外側広筋も、内側広筋と同様に上部と下部(こちらも斜走部と呼ばれます)に分かれますが、両部の筋線維の走行方向は内側広筋ほどの差はありません。
ただし、起始部近くの走行方向から予測される下部の働きは、やはり上部のそれとは異なると言えるでしょう。
ファシャワークを行う際、内側広筋と外側広筋の斜走部が膝蓋骨をV字で挟む形のこのエリアでは、様々な働きかけが可能です。
内側広筋下部は広筋内転筋腱板に起始しますので、大内転筋とは直接的な繋がりがあります。
大内転筋の前側面は他の内転筋群の、後側面ではハムストリングスの「床」となっており、かつそれらと部分的に連結しています。
外側広筋下部は腸脛靭帯の裏面に起始しますが、大腿筋膜張筋と大臀筋浅部はその腸脛靭帯に付着しています。
また腸脛靭帯は大腿筋膜の肥厚部(一部)ですので、大腿全体の構造に直接的に関わっています。
このV字エリアに働きかけることで、両下肢、骨盤帯に対しては直接的、及び即時的に変化を起こせます(その上部構造に対しても同様ですが)。
上記V字形エリアに関するご質問を、受講生さんからいただいたことをきっかけに、「番外」のデモを行いました。
外側広筋下部筋膜に対して働きかけることで、反対側の内転筋群、足の踏み込み(反対側)、重心の位置を変えましたが、施術時間は1分くらいだったと思います。
外側広筋下部の張力(緊張度)をファシャワークによって調整したのですが、デモのモデルになってくださったSさんは、施術中、反対側の内転筋群に起こった変化を感じられたようです。
【半腱様筋】
起始:坐骨結節
停止:脛骨粗面内側
【半膜様筋】
起始:坐骨結節
停止:脛骨内側顆内側部〜後部

ハムストリングスには、下腿部の内側へ向かって走行する半腱様筋と半膜様筋、外側へ向かって走行する大腿二頭筋があります。
半腱様筋と大腿二頭筋長頭は坐骨結節の近接する部位に起始し、同じ深さを走行します。
これら2筋は最終的に下腿部の内外へ別れますが、かなり広い範囲で筋連結があります。
ただし連結は深部で起こっているので、並走部の筋間を触察することは可能です。
大腿二頭筋短頭の起始部は大転筋深部のすぐ尾方です。
また停止部は、長頭腱に対して半羽状の形状で付着し、独自の腱を持っていません。
半膜様筋は半腱様筋と大腿二頭筋長頭の下層を走行します。
この筋は、半腱様筋と大腿二頭筋に隠れた部位の多くが腱膜様になっています。
今回は半腱様筋と半膜様筋の2筋を触察実習しました。
半腱様筋については、停止腱の走行に合わせて膝の屈曲角度を決めることで、触察を容易にする方法をお伝えしました。
半膜様筋については、膝関節内側を開く操作によって活動を強化した上で、上層を走行する半腱様筋と大腿二頭筋長頭から鑑別しました。
ところで、「番外デモ」をもう1つ行いました。
ハムストリングスの触察デモを行った際に、「目が見開いた」「視界が広がった」という感想をいただきました。
触察実習では、必ずと言ってよいほど、何らかの身体変化が起こります(それを狙っているわけではありません)。
今回の変化は体液循環によるものと判断し、それを強化するために体液系(血液、リンパ液、細胞間質液)に対する働きかけを鼠径部周辺に対して行いました(まったくの番外です(笑))。
10秒くらいの施術だったでしょうか、効果(より目が開く感じ)を実感していただけたようです。
まあ、ボディワークの守備範囲はなかなか広いということで。