2014年08月30日

下肢背側のリリース/ボディワーク入門講座

昨日、よみうりカルチャー恵比寿主催の「ボディワーク入門講座」(講師:斎藤瑞穂、小川隆之)が開催されました。
今回のテーマは「下肢背側のリリース」でした。
腰背部、臀部、下腿背側部に対して、ソマティカルワーク、ファシャワーク(どちらもオープンパス・メソッド(R)のテクニック)を行いました。

私たち人間の基本姿勢は直立位です。
しかし、私たちの身体を骨格レベルで見ると、直立に適しているとは言えません。
軸骨格と付属骨格との関係、その関節の仕方を見ても、脊柱と頭蓋、胸郭、骨盤との位置関係を見ても、四足のほうが負担なく生活できそうです。

四足動物は、特殊感覚器(目、耳、鼻、口など)のある頭部を前方に向けて、全肢を使って前進します。
脊柱はその頭部に従って、地面と平行に動きます。
人間の場合には、下肢の上に脊柱が縦に、またその上に頭部が乗っています。
上肢は胸郭から垂れ下がっています。
頭部、胸部、骨盤は脊柱の前側に付いているので、脊柱に生理曲線があるとしても、身体の前後バランスは良いと言えません。

前回と今回、リリースの対象とした、身体背側にある筋群は、こうした身体を支えて、私たちの立位での生活を助けています。

前回は背中の筋群に対して筋膜リリースを、今回は背中の下部(腰背部)筋群、臀部筋群、大腿部背側筋群(ハムストリングス)に対してソマティカルワーク、ファシャワーク(≒筋膜リリース)を行いました。
本講座のサブタイトルは「ロルフ・メソッドに学ぶ」ですので、対象筋群の範囲はロルフィングの第6セッションに相当するものでしたが、リリース方法は(特に今回は)オープンパス・メソッド(R)独自の内容となりました。

実技練習は、今回もペアになって行いました。
ソマティカルワークについては、いつもより実践に近い形で、互いに相手の身体状況に合わせた働きかけを行いました。
クライアント役は腹臥位になって、股関節を伸展させます。
股関節を伸展するとき、健康な状態では同側の大腿背側部、同側の臀部、反対側の腰背部、同側の腰背部の順に筋活動(発火)が起こります。
まず、その順番が狂っていないか、過度に反応する筋、あるいは弱化した筋はないかを触察によって調べましたが、この作業がなかなか難しかったようです。
調べ終えた後、不具合のある筋を正常化するために、微小なムーブメントとソフト・タッチ(ホールディング)を使って働きかけました。
前者は中枢の伝達系に対して脱学習のために、後者は末梢の器官である筋紡錘、ゴルジ腱器官に対して用いました。

ファシャワークの実習では、腰背筋膜、脊柱起立筋群、広背筋、大臀筋、ハムストリングスに対して働きかけました。
今回は手技に意図を持たせ、圧の方向(線維に沿って、あるいは横切って)を決めてのリリースとなりました。

2014年08月02日

手技のツールを学ぶ/ボディワーク入門講座

8月1日、よみうりカルチャー恵比寿主催の「ボディワーク入門講座」(講師:斎藤瑞穂、小川隆之)が開催されました。
今回のテーマは「手技のツールを学ぶ/背中のリリース」でした。
適切な手技のツールを選択できると、施術の効果が倍増します。

前回の範囲であるお腹に比べると、背中は平坦に見えて、筋膜リリースの施術も単純だろうと思われるかもしれません。
背中は一見平坦に見えますが、本当はお腹に劣らず複雑な構造をしています。

目立って触れられる骨は、さまざまな形をしています。
正中に脊柱があり、その上半に片側12本の肋骨が接続しています。
それらが上中部にかごの形をした胸郭を作っています。
肋骨を正中から外側へたどると、明瞭な角(肋骨角)が見つかり、その後に曲線が続きます。
胸郭の上には2つの肩甲骨が乗っていて、その外側には腕が接続しています。

筋肉は重なり合って走行します。
脊柱の両脇に山が見えますが、この山は脊柱起立筋群です。
脊柱起立筋群は、胸郭上では骨格の受け皿(脊柱から肋骨角までの肋骨上)の上を、胸郭がない部位では腱膜に包まれて骨盤(背中の下端と考えてよいでしょう)まで続きます。
その上に、脊柱起立筋群を斜めに(内上から外下へ、外上から内下へ)横切る筋群が重なります。
腱、靭帯も形や方向を多様にしながら支持力を強化しています(靭帯に対する施術は、今回は行いませんでした)。

上記のような背中の構造に対して手技のツールを使い分ける実習をしました。
使ったツールは手指、手掌、指関節(ナックル)、拳(ソフトフィスト)、前腕、肘です。

受け手には座位および腹臥位になってもらいましたが、座位での実習では姿勢筋を活性化させるソマティクスも含めて行いました。

以下のようにツールを練習しました。
1.受け手は座位、ソマティクスを含めて
 1)僧帽筋下行部←前腕
 2)肩甲骨上角および肩甲挙筋←指関節
 3)肩甲骨棘上窩および棘上筋←手指
 4)後頸部から肩部を走行する筋群←フックした手指
2.受け手は腹臥位
 1)棘上筋←指関節
 2)棘下筋←拳
 3)脊柱起立筋群←前腕
 4)棘突起脇の溝←肘
 5)肩甲骨外縁の筋群←手掌
 6)腸骨稜←手指、フックした手指、指関節、肘

2014年07月19日

腹部のリリース/ボディワーク入門講座

7月18日、よみうりカルチャー恵比寿主催の「ボディワーク入門講座」(講師:斎藤瑞穂、小川隆之)が開催されました。
今回のテーマは「腹部のリリース」でした。

一般的に腹部とは、どの辺りまでを言うのでしょうか?
体幹前面の、肋骨弓より下の部分を言うのでしょうが、多分、どこまでと明確には言えないでしょう。
しかし解剖学的には、腹壁筋群が途切れる部位までと考えてよいでしょうから、そうであれば胸腰筋膜の外縁までとなります。
そう考えると脊柱起立筋のすぐ外側となり、一般的な腹部のイメージ(明確ではありませんが・・・)と比較して、かなり広いのではないでしょうか。

ボディワーカーが腹部に働きかけるとき、この解剖学的な捉え方が大変に役立ちます。
と言うより、そうでなければ腹壁筋群を全体的に扱うことが難しくなるでしょう。

ちなみに腹壁筋の付着部は以下のとおりです。
腹直筋:(起始)恥骨結合、恥骨結節、(停止)第5〜7肋軟骨、剣状突起
外腹斜筋:(起始)第5〜12肋骨外面、(停止)腸骨稜、鼠径靭帯(腱膜となって)、腹直筋鞘
内腹斜筋:(起始)鼠径靭帯、腸骨稜、胸腰筋膜、(停止)第11〜12肋骨、腹直筋鞘
腹横筋:(起始)鼠径靭帯、腸骨稜、胸腰筋膜、第7〜12肋骨、(停止)腹直筋鞘

今回は、腹横筋に対してムーブメントワーク(オープンパス・メソッド(R)で言うと「ソマティカルワーク」)を、腹直筋、大腰筋、腸骨筋、縫工筋に対して筋膜リリース(同じく「ファシャワーク」)を行いました。
ムーブメントワークは、協応運動(co-ordination)を基礎にして行いました。
足底のわずかな踏み込みを使って、その動きを骨盤、脊椎(腰椎から頸椎に向けて)、腹横筋と連携させました。
筋膜リリースの実習では、腹直筋をリリースすることで腹壁全体を弛めた後、腹腔内にある腸腰筋に働きかけました。
さらに、腹部で行った施術の影響を脚部に般化させるために縫工筋に働きかけました。

2014年07月05日

大腿内側に働きかける/ボディワーク入門講座

7月4日、よみうりカルチャー恵比寿主催の「ボディワーク入門講座」(講師:斎藤瑞穂、小川隆之)が開催されました。
今回のテーマは「大腿内側をリリースする」でした。

最初に内転筋について話しました。
内転筋群は大腿内側の浅部から深部までを走行しますが、ロルフ・メソッドでは(本講座のサブ・タイトルが「ロルフ・メソッドに学ぶ」なので、ロルフ・メソッドについて言及することが多々あります)これらをコアの筋群として扱います。
私たちが立位のとき、重心線(身体の重心を通る垂直線)が両脚内側の間を通ります。
したがって内転筋群は、重心線に沿うように走行することになります。
重心線を中心と考えれば、これらの筋群はコアとなるわけです。

私たちが立位姿勢を保つためには、この重心線は支持基底面(私たちが体重を感じる支持面―立位のときには足底―とその間にできる底面)内を通らなければなりません。
内転筋群は重心線に沿うように走行しながら、それが支持基底面内を通るように助けています(もちろんこの仕事は、内転筋群だけのものではありませんが)。

今回の実習では、セルフ・リリース、ペア・リリースともに、ロルフ・メソッドではなくオープンパス・メソッド(R)を行いました。
セルフ・リリースでは、一方の脚にファシャワークを、もう一方にソマティカルワークを行いました。
大腿内側から内果にかけてファシャワークを行いましたが、短い時間で重心(重心線が支持基底面を通る位置)が変わり、ワークした側の立位感が全く違うことに、受講生の皆さんは驚かれたかと思います。

次に反対の脚にソマティカルワークを行いました。
今回は斎藤講師が独自に考案したもので、わずかな動きと感覚を使うだけで大きな変化を体験できる方法です(オープンパス・メソッド(R)のトレーニングで行うレベルに近い内容でしたが、受講生の皆さんには受け取っていただけたかと思います。ご自宅でも、またお仕事でもぜひ試してみてください)。
導入部では、股関節の小さい動きを使って内転筋群を活性化しました。
しかし、内転筋群はそれだけで働くわけではありませんし、股関節が効率的でスムースな動作を行うためには、骨盤底筋群、腹壁筋群などの協力が必要です。
各筋、各筋群の分化を行い、協応運動を作り出しながらムーブメントを誘導しました。
内転筋群を他の筋群が安定させたり、動きを促進させたりするのを感覚していただけたかと思います。

最後にペア・リリースを行いました。
今回、人数の関係で、私はペア・リリースに参加しました。
受け手になったとき、大内転筋、長趾屈筋などにあった拘縮を、受講生さんがリリースしてくださいました。
脚が楽になり、立位姿勢がかなり変わりました。
大変に得した気分でした(笑)。


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2014年06月21日

横のライン(下半部)に働きかける/ボディワーク入門講座

6月20日、よみうりカルチャー恵比寿主催の「ボディワーク入門講座」(講師:斎藤瑞穂、小川隆之)が開催されました。
今回のテーマは「横のライン(下半部)に働きかける」でした。
前回、上半部(腸骨稜より上)がテーマでしたので、今回はその続きです。

講義で腸骨稜、大臀筋、中臀筋、大腿筋膜張筋、腸脛靭帯について話し、筋膜リリースの実習でそれらを施術対象にしました。

大臀筋は人間が直立することによって今のような形状になりました。
人間の他に二足歩行ができる動物というと、猿やチンパンジー、ゴリラなどを思い出すでしょうか。
彼らは二足歩行はできますが、人間のように「直立」することは難しいでしょう。
彼らの臀部を観察すると、人間のような豊かなふくらみはありません。
人間の臀部のふくらみは大臀筋によるのですが、人間と他の動物ではこの筋肉の形状や強さが違います。

人間の大臀筋は、隣接する他の筋肉と比べて肥大し、発達していますが、猿やチンパンジーの大臀筋は小さく、それほど発達していません(ちなみに、馬の臀部は豊かに見えますが、あれは筋肉で言うとハムストリングスなのです)。

人間が直立するために、大臀筋はどのように役立っているでしょうか。
大臀筋の働きとしては股関節の伸展、外旋、外転、内転がありますが、なかでも伸展の働きが最も強いでしょう。
この働きによって、大腿骨の上に骨盤や体幹を持ち上げることができます。

そしてそれだけではなく、大臀筋には+αの働きがあります。
大臀筋は腰背腱膜に付着しています。
腰背腱膜は脊柱起立筋群を包み込みますが、この腰背腱膜の緊張を調整することで腰部に(前後方向の)安定性を持たせ、かつ脊柱起立筋群を支持します。

また大臀筋は腸脛靭帯に付着し、大腿筋膜張筋と共にその緊張を調節し、膝関節をも安定させます。
腸脛靭帯は大腿部を包み込む浅筋膜の一部が肥大化したものなので、結果として大臀筋は大腿部全体を支持し、下腿部や足部にまで影響を及ぼします。

以上のことを考えると、大臀筋は安定筋と言えるでしょうか。
安定筋というと、小さめで、関節に接して走行する筋肉、あるいはインナーマッスルというイメージがあるかもしれません。
大臀筋は大きく、表層にある強力な筋肉ですが、その働きからすると間違いなく安定筋の1つと言えるでしょう。

中臀筋については、受講生に皆さんに動いていただき、触察していただきながら話しました。
大臀筋と同様にその形状、働きについて説明しました。

片足立ちで立ち、立ち足に体重をかけるように上体を傾けたり、反対方向へ傾けたりしながら触察すると、中臀筋の働きは強くなったり、弱くなったりします。
歩きながら触察してみると、脚の動きに合わせて中臀筋の線維がいろいろに働き、それにつれて全体の形状が変わっていくように感じられます。
動かし方、体重のかかり方によって、中臀筋はマルチに対応できるのです。
やはりこの筋肉も安定筋です。

筋膜リリースの実習では、大臀筋、中臀筋、大腿筋膜張筋、腸脛靭帯に対して効果的に働きかけるテクニックをお伝えしました。
セルフ・リリース、ペア・リリースを順に行いましたが、セルフ・リリースでは腸脛靭帯に対する働きかけを通して、他の3部位も含めて変化を起こす方法を、ペア・リリースでは4部位に働きかけ、それらをバランスしていく方法をお伝えしました。
変化が素早く大きく起こるので、受講生の皆さんは驚かれていました。


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2014年06月07日

横のラインに働きかける/ボディワーク入門講座

6月6日、よみうりカルチャー恵比寿主催「ボディワーク入門講座」(講師:斎藤瑞穂、小川隆之)が開催されました。
今回のテーマは「横のラインに働きかける」でした。

横のラインとは立位の際に耳介、肩峰、大転子、腓骨頭、外果を通るラインのことですが、このラインが鉛直であれば、生体力学的に言って最もエネルギー消費が少なくなるそうです。
しかし、そんな機会は稀でしょうね(笑)。
せいぜい、ボディワーカーに指示されて、姿勢分析のために静止して立つときくらいのことでしょう。

私たちは常に動いています。
じっと動かずにいるときのほうが少ないでしょう。
私たちが何かに手を伸ばしたり、歩いたり、身動きするたびに、横のラインは右に捻じれたり、左に捻じれたり、湾曲したりして、常に動くのです。

そうだとすると、「横のラインに働きかける」というのは、このラインを安定(固定)させるというより、自由に「展開」できるように働きかけることでしょう。

今回は、横のラインに関わるムーブメントワークと筋膜リリースを行いました。
ムーブメントワークはロルフ・メソッドではなく、オープンパス・メソッド(R)の内容となりました。
股関節と肩関節を意識したムーブメントによって、軸骨格と付属骨格の分化と協応(co-ordination)を行いました。
また筋膜リリースでは、腸骨稜周辺と肩甲帯周辺にアプローチしました。
腰方形筋、腹壁筋群、体幹の表層筋膜、前鋸筋、広背筋などを対象にしました。

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パルペーション公開セッション受け付け開始
パルペーション公開セッションおよび1dayワークショップ
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2014年05月17日

下腿部〜足部のリリース/ボディワーク入門講座

5月16日、よみうりカルチャー恵比寿主催「ボディワーク入門講座」が開催されました。
今回のテーマは「下腿部〜足部のリリース」でした。

下腿部、足部は「グラウンディング」に直接関わる部位です。
グラウンディングの意味は「大地に根付くこと」でしょうか。
ただし根付くとは言っても、私たちは花々や草木のような植物ではないので、それは「大地に根を張ること」ではあり得ません。

植物が大地に根を張るのは生きるため、大地から滋養を得るためですが、私たち人間は生きるため、食物を得るために移動しなければなりません。
それは私たちの祖先が、また四足動物が、獲物を追って大地を走っていた時代から、いやもっと以前、植物と動物が分かれて以来のことでしょう。

大地に根を張らない動物が、それでも大地と接し、大地と親密な関係を保てるのは、そして大地の上を移動できるのは、重力の助けがあってのことです。
重力は私たちの身体を地球の中心に引き付けることで、私たちを大地に留まらせます。

私たちがまだ人間になっておらず、四足歩行の動物だった時代には、大地は近く、私たちが移動すると、体軸は大地に沿って(寄り添って)進みました。
私たちが立ち上がり、人間になったときから、私たちの体軸は、移動の方向ではなく、上下を向くことになりました。
これは四足動物と比較すると、かなり不安定な状態です。

体重(重力)を感じることのできる支持面(立っているときには足底)とその間にできる底面を「支持基底面」と言いますが、重心線がこの支持基底面から外れると、私たちは立っていることができません。
四足動物の支持基底面は広く安定していますが、二足で立つ私たちのそれはかなり狭く、体重を支えるのに十分とは言えません。

私たちには、安全に立つための(転倒しないための)「戦略」が必要でした。
それが足部の柔軟な骨格構造や、四足動物に劣らない感覚受容器の発達です。
これらの戦略は大地との関係を良好にしました。

不安定でありながらも、重力の助けを借りて、大地と良好な関係を保つこと。
これが植物でも四足動物でもなく、人間にとっての「グラウンディング」ではないでしょうか。

しかし現代の生活では、大地は平坦で、人間に対して挑戦的でなくなり、足部は靴によって守られ、締め付けられるなどして、せっかくの「戦略」もその働きを抑制されていると言えるでしょう。
足部の不具合、それによる足腰の疲労や疾患、姿勢の崩れなど、数々の身体問題は、その現れである場合も多いでしょう。

今回のテーマである「下腿部〜足部のリリース」は、そんな「戦略」(足部の柔軟な構造、優れた感覚受容器)を活性化させる働きかけを行うことです。

今回もセルフリリースに多くの時間を使いました。
下腿部の前面、後面の筋膜に働きかけて、受講生に皆さんに、リリースの前後で、足底と床との接地感、身体感覚などにどんな違いがあるのか感じていただきました。
またペアリリースでは、下腿部から足部を含む筋膜全体を弛めるテクニック、下腿部から足部に走行する腱をまとめる支帯という組織を活性化するテクニック、足底の腱膜を伸長するテクニックなどを実習しました。
今回はすべてのリリースで、ムーブメントと感覚留意を使ったので、それが少し難しかったかもしれません。


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2014年05月03日

胸部のリリース/ボディワーク入門講座

5月2日、よみうりカルチャー恵比寿主催の「ボディワーク入門講座」が開催されました。
今回のテーマは「胸部のリリース」でした。

講義では胸郭について話しました。
胸郭には大小様々な呼吸関係筋が付着しています。それらの筋が、歩いているとき、走っているとき、休んでいるとき、そのときどきで、ある筋肉が働いたり、他の筋肉が休んだり、協力し合って呼吸運動を作り出しています。
また胸郭には、頭頸部や腕部に繋がって、それらを動かす筋肉も付着しています。それらが上手く働けば、頭や腕を効果的に動かすだけではなく、胸郭にほどよい刺激を与えてくれます。
さらに胸郭には、骨盤部を介して間接的に脚部に繋がる筋肉も付着しています。腹筋群がそうですし、広背筋などもそうです。
これらの筋群が調和して働くことができれば、私たちは楽に呼吸し、自由に手を伸ばし、健やかに生活することが可能でしょうが、なかなかそうはいきません。
私たちは日常の葛藤に息を詰め、仕事でキーボードを打ち続け、緊張で身を固くして、結果としてこれらの筋群を酷使します。

今回は、これら酷使された胸郭周りの筋群をリリースする方法をお伝えしました。

今回の実習では、セルフリリースの時間を多めに取りました。そして感覚を使うことを強調しました。オープンパスが行うソマティカルワーカー養成トレーニングの準備のような内容となりました。
ムーブメントワークも、筋膜リリースも、感覚を使わずに行うのなら、単なるエクササイズに、あるいは物理的に筋膜をストレッチするだけのものになってしまします。
感覚を使うことにより、動きが繊細に、そして正確になり、今まで感じなかった身体部位を「取り戻す」ことができます。
筋膜が硬く縮んでしまっている感覚が分かるようになり、いつでもそれに対処することが可能になります。

セルフリリースでは、呼吸を背中に入れるテクニックと、胸(前面)に入れるテクニックを実習しました。
前者では、背中の感覚を高めるために、床との接触感を使ったり、感覚しやすいポーズを取ったりしました。
後者では、胸が広がるのを感覚しやすくするため、筋膜を手技でストレッチしながら行いました。

セルフリリースの後で、ペアリリースを行いました。牽引法と加圧法を順に行いました。
牽引法では、腕を牽引することで腕から胸郭にかけての部分をリリースしました。関節包を牽引する方法と、表層筋膜を牽引する方法を比較しながら行いました。
外観は同じように見えるのですが、意識の持ち方によって関節部分が牽引されたり、表層筋膜が牽引されたりします。また、視線を向けた部位がリリースするという方法もお伝えしました。
加圧法では、腕の拳上に合わせて胸郭側面をリリースしました。

2014年04月19日

筋膜について/ボディワーク入門講座

昨日(4/18)、よみうりカルチャー恵比寿主催の「ボディワーク入門講座」が開催されました。
今回の講座は「筋膜について」というテーマで進めました。

この講座は実践中心の内容ですが、実践に必要だと思われる理論、思想(考え方)などもお伝えしています。
この講座でお伝えする実践技法は、「筋膜リリース」と「ムーブメントワーク」に大別することができます。
前者は身体の「末梢」に対する働きかけで、主に筋膜を対象とします。後者は「中枢」(制御部分)に対する働きかけで、身体運動を通して脳神経系にアプローチします。
今回の講座は前者に関するもので、主に筋膜のことを解説した後、筋膜触察、筋膜リリースの実習を行いました。

筋膜リリースは、筋膜に不具合がある場合に、それを解消する目的で行うテクニックです。
筋膜にどんな不具合が生じるかというと、肥厚、拘縮、短縮、癒着などです。
肥厚というのは、筋膜の特定部分に持続して圧力が加えられることで、その部分が厚くなることです。
拘縮の多くは痛み(圧痛)を伴い、関連する筋にスパズムが起こっています。それに対して短縮は筋膜の線維化を起こしていて、状態が安定しています。
癒着は隣り合う筋膜どうしが癒合してしまっているケースです。
それぞれに対する筋膜リリースの方法は違いますが、実技練習は今回が初めてなので、そこまではお伝えしませんでした。

筋膜が不具合を起こす原因には、どんなことがあるでしょう?
まず挙げられるのは、日常動作&姿勢です。つまり、立ち方、座り方、歩き方などの癖です。
他にはスポーツ、趣味、事故や病気、文化的背景などでしょうか。
スポーツ、例えば球技などは利き手の筋肉が発達し、当然それを取り巻く筋膜も肥厚していきます。細かい手先の作業を伴うような趣味なども、姿勢の取り方によって筋膜を歪めるでしょう。
ただし筋膜を歪めることがあるからと言って、それらが良くないものだと決めてしまうのは早計です。スポーツを通して健康を促進することも、趣味を持つことで心理的に豊かな生活を送ることもできるのですから。
病気で臓器を傷めてしまったり、事故で怪我をしたりすれば、当然、筋膜は歪んでしまいます。外科手術を受ければ、必ず筋膜を切開しなければなりません。
文化的背景が原因というのは、例えば中世の上流社会の女性たちが身に着けていたコルセットは、彼女たちの腰部、腹部の筋膜に不具合を起こしたでしょうし、現代でもファッションに合わせて同様のことが起こる可能性はあります。

さてそれでは、筋膜は身体のどこにあるのでしょうか?
全身と言ってよいでしょう。身体の中は何層にも筋肉や臓器が重なっていますが、それらどの層にも存在します。あらゆる器官を包み込んでいて、また仕切っています。
ですから、身体のどこか一部に起こった不具合が、筋膜を通して全身に広がるわけです。

そして筋膜の組成ですが、主成分はコラーゲン(膠原線維)とエラスティン(弾性線維)です。
前者には形を保つ働きがあり、後者には伸び縮みする働きがあります。
私たちの身体は、安定性と可動性という一見矛盾する性質のバランスを必要としますが、2種の成分によって筋膜のレベルでもこのバランスが保たれています。

筋膜の説明の後、筋膜の触察実習、筋膜リリースのための説明をしました。
身体の断面図を描いて筋膜の位置をお伝えし、どこまでどのように手指を進行させればよいかをお話ししました。
慣れてくれば、手技を自由に使ったほうが効果が上がることもあるのですが、最初は手技圧の方向、進入する深さなどに留意しながら行うほうが効果的です。
実習では、受講生さんどうしペアを作って、お互いに筋膜を触察し合ったり、ストレッチしたりしました。実習初回にしては、皆さん、かなり上手く触察手技、リリース手技を使われていたと思います。

2014年04月05日

ボディワーク体験/ボディワーク入門講座

4月4日、よみうりカルチャー恵比寿「ボディワーク入門/ロルフ・メソッドに学ぶ」講座が開催されました。
今回が4月期(4〜9月)初日なので、参加者の皆さんに、本講座の2本柱である筋膜リリースとムーブメントワークの体験をしていただきました。

筋膜リリースの体験では、テーマごとに希望者を募って、デモンストレーションのモデルになっていただきました。
テーマは「重心、足圧を変える」「四肢、体幹の可動域を変える」「痛みを解消する」などでした。
身体の変わりやすさに、また変化が素早く起こることに、皆さん、驚かれたようです。
「痛みを解消する」のテーマでは、偏頭痛の解消となりましたが、これに関してはオープンパス・メソッドの方法(エントリーポイントを用いたテクニック)で行いました。

ムーブメントワークでは、腕と体幹の動きを使ったムーブメントを体験していただきました。
明らかに動きの質や身体感覚の深まりを感じられたのではないでしょうか。

次回からは、筋膜リリースとムーブメントワークを、『ボディワーク入門』に基づいて皆さんに習得していだだくカリキュラムとなります。
また背景となる考え方などもお伝えしていきます。